第4次産業革命とDX
このシリーズでは、新事業開発において、現代では必須となったDXについて、順を追って説明していきたいと思います。私自身も、多くの情報を調査しながらですが、過去40年ほどの間に、日本企業、外資系企業、個人事業での経験を基に、できるだけわかりやすく説明をしていきたいと思います。
最初は、ビジネス世界の昨今の外部環境についてまとめています。ちょっとアカデミックな内容で、私自身はあまり好きではないのですが、新規事業を始めるにあたり、やはり基本的な外部環境の理解は欠かせないと思います。
DXを推進するに当たり、どうしても知っておくべき、世の中の動向や技術の動向があります。それらの中で最近よく取り上げられる項目を箇条書きにしてみました。
働き方に関するもの
- テレワークの定着
- オンライン会議
- オンライン教育
- オンライン営業
- オンラインイベント など 何でもオンライン-X
- リモートワーク(遠距離)
その他の大きな変化のキーワード
- シェアリングエコノミー
- XaaSの普及
- Smart -Xの拡大
- サブスクリプションビジネスモデルの拡大
- キャッシュレス決済の普及
- SNSの拡大と一般化
- ネット販売の拡大
- UXの一般化
- プラットフォームビジネスモデルの台頭
- AIの急速な普及
- Disruptiveな新技術の出現(Drone, VR, など)
Society 5.0(内閣府の科学技術基本計画より)
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会
ビジネスを考えるときに、どうしても大きな社会の枠組の変化を理解しておく必要があります。
上記の項目の中で、3番目については、半世紀以来の大きな変化が起きようとしていると感じます。今まで、政治は変わらないという固定観念が染み付いていたことでしょうが、日本において昨年の管政権のデジタル化宣言は、極めて大きな事態ととらえるべきだと思います。
我々5G工事に関係するかも知れないこと(推測ですが)で、例えば、無線局の申請から許可までの手続きはコストと時間を多く必要としていますが、小型化した6Gに向けて大幅に簡略化されるかも知れません。既に、政府の補助金関連の手続きが、次々とオンライン化してきており、役所に出向かなくても手続きができるようになりつつあります。まさに、エストニアのような行政システムになる方向です。
地方自治体は、デジタル化とデジタルを利用したビジネスの機会が非常に大きいと予測されます。今までは、大手IT企業が、人脈やコネクションで独占していた市場が中小企業にも開放される可能性もでてくるかもしれません。
すべての変化する速度が加速する
前記の企業、人、行政、技術の変化が加速すると、デバイドが発生することになります。過去においてデジタルデバイドと言う言葉で表現されていたのですが、今後は、デジタルにかかわらず、変化に追随出来る人と、できない人・会社というデバイドが発生するかも知れません。
わかりやすい例では、以前にも紹介したハンコ大臣(IT担当)
これは、デジタルデバイドではないわけです。デジタルは関係なく、時代の変化に対応できないで、取り残される運命にある人や会社になるわけです。
これは、デジタル化に対するものをデジタルデバイドと言いますが、進化に適応できるかどうかということなので、Evolution Divide (エボルーションデバイド)と呼びます。
発想の転換
ビジネスの世界では、よく発想の転換という言葉が使われます。テレビなどのメディアでは、この手のトピックがよく売れます。たいていの場合は、発想を変えることで成功した例が述べられて、みなさんも発想の転換を「どうぞ」みたいな感じの結論になります。
いろいろな実例を見てみると、千差万別で裏になにか法則や、やり方があるかも知れないと思います。確かになにか役に立つプロセスはあるとは思います。たとえば昔ながらのブレインストーミングなどはよく使われている方法です。ただ、やっぱり一番の特徴は、特定の個人の才能によるところが大きいかも知れません。
では、そういった特別な人がいない会社では、新規事業はできないのでしょうか? 私はそんなことはないと思います。今までなかったビジネスを発案する人は、(たとえばシェアリングビジネス)世界中で数少ないかもしれませんが、その新しいビジネスモデルのマネをすることは、それほど難しいことではないと思います。DXビジネスなどは、これから10年以上続くわけですから、新しい発想で成功例がでたならば、すばやく行動することで2番手、3番手で十分成功できるかもしれません。
シェアリングエコノミー
最初に車の「カーシェアリング」を初めたのは1987年スイスだそうです。そんなに昔に発見されたんですんね。それから、シェアハウス、シェアオフィス、Co-working space、Airbnbと広がっていったわけです。 XaaSも同様です。SaaSから始まって、次々と〇〇as a serviceと真似っ子ビジネスが広がり続けています。
真似っ子といえば、世界最大の真似っ子大国は中国です。最近では真似っ子が、オリジナルを飛び越えて世界一になろうとしています。シリコンバレーより深センの時代です。昔 i phoneの新機種が発売される前に、中国は真似っ子phoneを発売して話題となりました。
新しい発想を真似てビジネスに応用する
シャアリングもサブスクリプションも特許ではないので、いくら真似してもだれも文句は言いません。問題は、「むかしながら」から脱却しようとしないことです。コロナが発生して、オンライン〇〇が急速に広がってきています。多くの企業がそれに対応しています。ただ、明らかに、「むかしながら」の考え方から変わらない企業もたくさんいるわけです。実際に世の中では、コロナが発生する何年も前からリモートワーク中心でビジネスを回している企業もあります。2020年1月にコロナが勃発して直ぐに、全社員をリモートワークに切り替えたGMOインターネットの熊谷社長が、渋谷の本社ビルが空っぽになっても、業績になんの変化もないことに気がついて「今まで、この高いオフィスってなんだったんだ」と、テレビでいってたのが印象的でした。
コロナのお陰で、「働き方改革」がより認知され、実質的に働き方が変わってきています。しかし、それを見ても、「むかしながら」を続けるところもたくさんアルわけです。
とにかく他社の「いいところを真似る」技術
真似るというと簡単そうに聞こえますが、やはりそれにも技術が必要です。
自社の置かれている立場、環境は唯一のもので、他社が成功した環境とは異なるわけですから、真似るにしてもよく状況を分析し、いろいろな角度からの考察が必要です。そのときに、ある程度役に立つプロセスや考え方は、勉強して学習する必要があります。いくつかのキーポイントを列挙します。
不退転の決意(これが第一です)
思い込み、古い固定観念に気づく
私達は、知らず知らずの内に様々な制約に縛られて生きている。自分を取り巻くビジネス環境、生活基盤、人間関係のなかで培われた価値観や常識にとらわれてしまうのは、やむを得ないことです。だからこそ発想を転換するには、能動的な努力が必要です。異性や子供の目線で見てみる、上司や部下の考え方を想像してみる、反対派の立場に立ってみる、主従関係を入れ替えてみる、前提を外して検討してみる、などなど。普段と違う立ち位置から客観的に物事を見ることを、日頃から意識しておくことが大切です。自分の「思い込み」にまずもって気付くことができれば、視野は大きく広がると思います。。
過去の(他社の)新発想の例をたくさん勉強し咀嚼する
思い込みに気づけと言われても、何もしないで考えるだけでは、気付けるようにはなりません。具体的な新発想の実例をたくさん勉強してみること、それも複数人でその本質的な部分と自社への応用のPracticeをやることが効果的です。これを繰り返すことによって、人間の思い込みに気づいたり、変化することへの抵抗感がなくなり、より自由な発想ができるようになることでしょう。
思考のツールを利用してビジネス構築の練習をする
世の中には既に、学者の方々が、いろいろなツールを発表されているので、それらを徹底的に活用しましょう。自分で開発してる暇はないし、必要ないです。真似をして成功し、世界のトップに躍り出ようとしている中国がいい例ではないでしょうか。独創性などと悠長なことを言っていると、取り残されて敗者になりかねません。いいものを素早く見つけてまず真似をする。そのうち、時々独創的なアイデアが出てきて頭角を表す。そういった努力が必要です。
人間はトレーニングによって、いくらでも進化できますので、とにかく努力することです。これを、会社の組織でチームを作ってやることによって、DXソリューションの発想ができる人材チームが出来てくるのではないでしょうか。
同じチームで、次のビジネスモデルの学習・訓練も行っていきます。
ビジネスモデル
企業を取り巻く環境はめまぐるしく変化する中、企業が敗者に転落しないで、持続的な成長を遂げるためには、「既存ビジネスの大幅な革新」を行うことが必要です。そのためには、言い古された言葉ではありますが、「ビジネスモデルの分析」が重要となります。
「ビジネスモデルの分析と革新」とは、自社の事業構造を表す設計図が現在のビジネス環境に合っているのか検証し、もし、違っているなら設計図を変更する革新が必要となります。
前章で述べたソニーなどの企業は、これを実行して成功したということです。では、このビジネスモデルの分析をどうすればよいのかということですが、今月2月の初旬に発行されたばかりの本ですが「ビジネスモデル」という書籍がありましたので、その一つの例をここで要点だけ述べてみます。
ビジネスモデルの分析・構築については、数え切れないほどのモデルがあるので、最終的には自社の環境や事業レベルにあったものを自らが選択し使用する必要があります。近年のDX時代にどのようなビジネスモデルが自社に適用できるか検討することが大切です。
サンプルとしてAmazonのビジネスモデルの図を引用します。
先程の書籍で述べられている例は、4つのビジネスモデルのパターン、63例もあり、この諸例からみてもわかるとうり、ただ一つの、回答があるものではないと言うことです。会社ごとに千差万別です。ただし、基本的な検討要素はやはり抑えておく必要があるでしょう。
(1)戦略モデル
自社のビジネスの核となる部分。ここでは、「顧客ターゲット」や「自社が顧客に提供できる価値」。
(2)(3)オペレーションモデル
ビジネスを行う上で検討すべき業務プロセスの構造のこと。ここでは、自社とライバルそれぞれの「資源」と「活動」。
(4)収益モデル
ビジネスの収益構造のこと。ここでは、コスト構造や収益構造。
(5)コンテキスト
ビジネスを成り立たせる前提のこと。ここでは、自社の資源・仕組み・理念に紐づく前提と、自社を取り巻く環境などの前提。
重要な戦略モデル
5つの要素のうち、最も重要なのが「戦略モデル」です。戦略モデルとは、「どのような顧客に、何を、どのような魅力付けをして、自社のどのような資源を生かして提供するのか」といった、ビジネスの全体的な方向性を決める要素のことです。
なお、ビジネスの核となる戦略モデルでは、次の2点を満たしているかどうかが、企業の持続的な成長を占う上での重要なポイントになります。実際に、戦略モデルに自社の戦略モデルを反映してゆく際、次の2点をクリアできているかチェックします。
- 市場に存在する「競合品」や「代替品」との差別化を図り、消費者に評価されるような価値を提供すること
- 差別化の方法として、自社に他社とは異なる「資源」と「活動」があること
このように、あらゆる企業のビジネスは、戦略モデルの5つの要素の組み合わせによって構成されており、その組み合わせを変えることで、(1)新しいビジネスを立案できたり、(2)既存のビジネスに革新をもたらすことができたりするわけです。
サンプルのケースでは
たとえばサンプルとして仮定したケースでは、2つの戦略とその2つを合わせた総合戦略の3モデルを検討する必要があると考えられます。
DX-1 : 既存のビジネスのIT武装化を促進し、シェアを拡大する
DX-2 : 社内のDX化を行い、その実績をベースにDXソリューションを構築
DX-3 : 上記2つの、異なった企業文化を融合して統合化されたビジネスモデル
それぞれのDX計画において、この戦略モデルをもちいて、ライバルとの差別化、競争力の検討を行ないます。
これらのモデルをパターンによって分類していくと、垂直統合型、レイヤーマスター型など、30以上の代表的な成功したケースが既にあるので、ゼロから自分で考えるより、既存のモデルを勉強することが大切です。非常に重要なことは、一昔前ではこういった情報がなかなか入手できなかったのですが、インターネットの時代では簡単に廉価で入手出来るわけです。 従って、まずはすみやかにこれらの情報を集め勉強し、咀嚼し、自社のケースに当てはめられる部分がないか検討するのがよいと思います。
よく知られているものですが、名前がつけられているのでパターンをいくつか紹介。
数がかなりあるので、ここでは、詳細には立ち入りませんが、既にこれらは詳細分析されているということを知っているだけでも随分役に立ちます。
- 垂直統合(サプライチェーンを統合)
- レイヤーマスター(強みのある分野に特化する)
- オーケストレーター(他社との提携を利用)
- シェアリング
- クラウドソーシング
30種類のモデルパターンについては、新規事業を行うにあたって準備段階において、事業開発チームメンバーと、ステークホールダーは十分に理解をする必要があります。
つまり、これだけでもかなり時間がかかるということです。事業開発チームについては、もっと後ろの章で述べることになりますので、ここでは割愛します。
ビジネスモデルとDX
全体の俯瞰図は、イメージ的ではありますが、下記のようになることと思います。
ちょっと繰り返しになりますが、全体の計画には、内外のリソースでかなりの工数が必要となります。