RPAの基礎

RPAとは何か?

まず、RPAはRobotics Process Automationの略号で、業務自動化の中心的役割をはたしています。歴史は古く2016年がRPA元年などとメディアで話題になったもので、それ以後着実に市場は確実に拡大をつづけております。

RPAという言葉は2016年初に欧米のコンサルティング会社によって提唱された、認知技術(ルールエンジン・機械学習・人工知能等)を活用した主にホワイトカラー業務の効率化の取り組みの概念で、人間の補完として業務を遂行できることから、デジタルレイバー(仮想知的労働者)とも言われています。

RPAは、 今まで人手で行っていた事務作業を、 ソフトウェアロボットが代行してくれ 、 業務プロセスを自動化することを指します。RPAは、決まった手順の定型業務や繰り返しおこなうルーティンワークを高速で実行することが得意で、企業はRPAを導入することによって大幅なコスト削減が可能となります。

言葉の説明より、下図をみていただければ、わかりやすいと思いますが、「日頃みなさんが職場でやっている作業を、ソフトウェアが代行してやってくれる」ということです。

RPAとは

よく知られている産業用のロボットは、機械的な動作を人間に変わって実行してくれるわけですが、RPAはPCなどのソフトウェアの操作作業(Digital Labor)を人に代わって実行してくれるものです。

産業用ロボットの場合には油を注入したり、摩耗部品を定期的に交換したりすることが必要ですが、RPAはその必要はありません。RPAは、主にキーボードやマウスクリックなどのPC 操作を代行してくれます。

産業用ロボットが肉体的な重労働を代行してくれるのに対し、RPAは定型的な繰り返しの頭脳労働を代行してくれます。ブルーカラーの人達を楽にしたのが産業用ロボットであるのに対し、ホワイトカラーの人達を楽にしてくれるのが、RPA のソフトウェアロボットです。

図2

産業用ロボットと同様に、RPAも人間の代行をしてくれるので、数多くのメリットが有り、企業のコストと時間の削減に大きく寄与します。具体的なメリットをいくつか揚げると次のようになります。


・ 仕事が速く操作が正確
・休憩不要で昼夜を問わず作業ができる
・人事的工数は不要(給与査定、社会保険、福利厚生など多数)

当然のことながら、会社から見ると大きなコスト削減ができてメリットは大きいのですが、働く人間の側からすると、仕事がなくなるという問題も発生してきます。

RPAの歴史と背景

RPAが市場に求められる背景には、人口減少による人手不足の解消、政府主導による働き方改革、企業間の競争力強化などの要求があります。

とくに、昨年勃発したコロナ禍によりリモートワークが必要になり、RPAを導入する企業が増加しています。

RPAの導入により企業は次のようなメリットを享受できるようになります。

① 業務量増大に対応できる
② 時短、品質向上による顧客満足度の向上
③ コスト削減による投資金額の増加
④ 人材不足の解消
⑤ 価格競争力の増加
⑥ 需要の変化への迅速な業務変更(これは一長一短)

RPAでなにができるか、もう少し具体的に

① キーボード操作を自動化できる
② マウス操作を自動化できる
③ 画面上に表示された文字を判別して取り込める
④ 画面の図形や文字の色などの属性が判別できる
⑤ 多種多様なアプリケーションを起動、終了できる(ID やパスワードの自動入力)
⑥ スケジュールされた日時に実行できる
⑦ カスタマイズが簡単
⑧ 業務の手順変更に柔軟に簡単に対応できる
⑨ 異なるアプリケーション間のデータの受け渡しができる
⑩ 離れたところからの遠隔操作ができる
⑪ 複数PC の制御ができる
⑫ ワークフローや手順書通りの操作ができる
⑬ エラー処理など、条件分岐した処理ができる
⑭ 過去のデータを基に分析できる

RPAでできることとは|5分で理解できる!活用事例とメリット|ITトレンド

RPAでできることは、多岐にわたり、近年ではインテリジェンスと他のシステムとの連携機能も拡充され、あらゆる分野に使われるようになってきています。

RPAでできることとは?~適応範囲の今とこれから・現在の導入事例~ | チャットシステム「モビエージェント」

市場規模とハイプカーブ

RPAは2016年「RPA元年」以来、全世界での市場規模が2016年度の2億7千万ドルから、2021年度には21億2千万ドルと4.5倍の規模になり、成長率は、2017年の63%から2021年度には20%となっています。

日本は、国際市場においても北米・西欧に続き世界第3位のシェア率となっています。

グラフを見ると、2016年度には85億円だったRPA市場規模が2021年度には1020億円まで伸長し、5年間でおよそ10倍以上に成長すると予測されています。

調査結果による見解は、


短中期的にみると、RPA市場にとっての好材料は多い。
テレワークの利用増加で業務効率化に取り組む企業が増え、ペーパーレスやハンコレスによるデジタル化も進んでいる。コロナ禍によって業績が悪化した企業では省人化とコスト削減ニーズが高まり、一方で需要が増加して業務量が増えた企業でも、これまで通りの人員体制で迅速に処理を進めるためにはRPAの活用が有効である。また、これまでは導入が遅れていた中堅中小企業や地方自治体などでのRPA導入も進んでいく見通しである。


と分析されています。

ハイプ・サイクル:2020年より(ガートナー)

ガートナーによるハイプカーブでのRPAの位置づけを見てみると、幻滅期の谷底を脱し、本格的な普及期に入ったとのことです。

これまで過熱気味に語られていたRPAのメリットや効果について、導入してみたもののあまり実感がなかった、メンテナンスに予想外の負荷がかかった、と人々が感じていたような状況(いわゆる幻滅期)を超えて、より効果的な利用方法が確立され、いよいよ本格的な拡大期に入ってきたということです。

(わかりやすく言うと、当初は宣伝される割には実際に導入しても、効果より不具合のほうが多く幻滅を体験していたのだけれど、これらの経験を土台にシステムがより便利なものに改善されて、実用的な段階に入ったということです。)

RPAソフトウェアのメリット

プログラミングなしで操作できる

RPAは初期段階から大幅に改良が進み、特にIT全般の潮流であるノーコード・ローコードの方向に進んでおり、システムエンジニアでなくても、自分のプロセスをRPAに設定して使えるようになってきて、よりユーザーフレンドリーになってきております。

既存のシステムに影響を与えない

今まで通常に行われてきた、SIerに依頼してシステム開発をして業務を自動化する場合であると、必ず既存のシステムの改良、改変などを伴ってきます。ところが、RPAはもともと既存のシステムを保持したまま人間の作業を代行するという考え方なので、既存のシステムに影響を与えないというメリットがあります。

現場ユーザー主導

現場で実際に作業をしている内容をソフトウェアに置き換えるので、基本的に現場主導の導入となり、それが同時に社員の自発的なプロセスの改善意識を高めモーティベーションを上げるいうメリットもあります。

DX・AIとの関係

RPAからAI連携へ

RPAは、わかりやすい一例で言うと、エクセルのマクロの次の世代のツールと考えられる。しかし、近年話題となっているAIのようなインテリジェントな判断機能は含まれていません。

別の章で、「RPAの進化」として詳細の説明をしておりますが、RPAも将来的にはAIのような人間の判断も含め自動化をする方向になると予測されており、既に多くの研究と実験が行われております。

RPA Evolution path

将来は、RPAはAI機能を搭載して、よりインテリジェントなツールに発展していく

RPA2.0として、別の章で説明しておりますのでそちらを御覧ください。

DXとRPAとは概念が大きく違う

DXについては、別のチャプターで特集しておりますが、明らかにDXとRPAは概念が大きく異なります。これは、歴史的な観点からもRPAがまず最初に導入されて、そのずっと先にDXがあるというのが現実的な味方でしょう。しかしながらDX信者にいわせるとRPAは単なるDigital Laborをロボットに置き換える小手先のツールでしかなく、そんなものをDXというと、DXの本質を理解していないということでしょう。

私の見方は、RPAであれ、DXであれ、とにかく自分のビジネスの効率化や革新に役にたつのであれば、なんでも臨機応変に利活用すべきだと思います。定義の議論より、とにかくビジネスに役にたつかどうかという実践的な観点からRPAもAIも利用していければよいわけです。

以上、RPAの概要について説明いたしました。次のチャプターはもう少し詳細の説明をいたします。

Thank you so much for reading RPA