トレンド「ペロブスカイト」を太陽電池に応用
2023年4月4日、岸田首相が「再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」で、「ペロブスカイト型太陽電池」と呼ばれる次世代パネルを2030年までに普及させる方針を打ち出した。この「ペロブスカイト太陽電池」、開発したのは日本人、宮坂力博士とその弟子だ。薄くて軽量、曲げることもできる。宮坂博士には、ノーベル賞候補の呼び声もあがっている。
2005年に宮坂教授が発見し世界の注目を集めたが、実用化に向けて本格的な注目を浴びた形だ。これは、今まで太陽光発電が既存の火力発電にどうしても決定的な差をつけられなかったところを、精算コストを大幅に下げて完全に議論の余地のない強さを証明し、SDGsの本命になりうることを示している。
にわかに、テレビ局が報道を始めた。実際には、実質的な稼働に入るにはまだ数年はかかるが、人類への貢献は絶大なものになるだろう。
2025年4月から東京都太陽光発電を義務化へ
世界の太陽エネルギー市場は、2019年以降2026年にかけて年平均20.5%のペースでで成長し、2026年には2,233億ドルに達すると予測されています。日本では、東京都で、新築住宅への太陽光発電の設置義務化も検討をつづけていましたが、いよいよ制度化され、2025年4月から施行されることになりました。
東京都ホームページより:
東京都は2022年2月に、「2030年カーボンハーフに向けた取組の加速 Fast forward to 『Carbon Half』」を策定、公表した。これは基準年を2000年として、2030年までに東京都内の温室効果ガス(GHG)排出量を50%削減する取り組みである。
新技術 太陽熱発電パラボリックトラフなど
パラボリックトラフ(放物面鏡を使用した発電システム)やソーラーパワータワーの発電需要が、集光型太陽光発電システム(CPV)の需要を後押しすることが期待されています。この集光型太陽光発電システムとは、太陽を追尾しながらレンズで集光するシステムで、薄型・軽量かつ安定した次世代の太陽光発電装置として高温・高日射地域において近年導入が増えています。
サプライヤーの競争激化
太陽光発電を利用した配電システムの発展に伴い、メーカー間の競争は激化しています。また、欧州やアジア太平洋地域では、市場が需要指向であるため、太陽電池モジュールの価格が大きく異なっています。さらには、モジュールメーカーの収益性の低下や市場の買収ストレスなどにより、太陽電池パネルの価格の低下も見られています。太陽電池モジュールの主な原材料である銀の価格が変動しているため、太陽電池パネルの設置需要が高まり、太陽エネルギー市場の成長も後押ししています。
PVランキング比較(参考レベルのdataです)
主力メーカーは上位3社くらいです。海外勢も検討しています。
順位 | 企業名 | 価格帯 | 出力量 | 変換効率 |
1位 | シャープ | 約7万円~16万円 | 103~259w | 14.2~19.6% |
2位 | 京セラ | 約6万円~23万円 | 49.5~315w | 19.2~20.8% |
3位 | パナソニック | 約5万円~19万円 | 70~255w | 14.8~19.9% |
4位 | 東芝 | 約12万円~28万円 | 205~360w | 15.8~22.1% |
5位 | 三菱電機 | 販売終了 | ー | ー |
6位 | ソーラーフロンティア | オープン価格 | 185~190w | ー |
7位 | サンテック | 約24万円~27万円 | 335~375w | 19.9~20.6% |
8位 | カナディアンソーラー | 約24万円~27万円 | 250~375w | 19.23 ~20.3% |
9位 | Qセルズ | オープン価格 | 185~355w | 18.90 ~20.6% |
10位 | トリナソーラー | オープン価格 | 360~405w | 20.5~21.1% |
蓄電システムの開発
太陽光発電システムが既存の従来型電源に取って代わるためには、太陽光発電貯蔵システムの開発が不可欠です。太陽光発電システムの設置需要の増加に伴い、蓄電システムの導入も増加することが予想されており、これが太陽エネルギー貯蔵用のリチウムイオン電池の需要を高め、太陽エネルギー市場の成長を促進します。
卒FITにより、売電収入が目的ではなくなる場合、太陽光発電と蓄電池はもはや切っても切り離せないものです。太陽光発電と蓄電池をセットで使うことで、電気料金をより削減出来ることに加えて、災害時の非常用電源として、昼間に発電した電気を毎回貯めて利用することができ、より長く電気を使えることにも繋がります。
現状、蓄電池のみを設置した家庭というのは少なく、もともと太陽光発電システムを導入している家庭であっても、【高価である】【設置必要がない】との理由で、蓄電池自体の導入はあまり進んできていません。
2019年以降は太陽光発電システムと組み合わせて蓄電池を導入するケースが増加し、売電収入を目的として利用していた家庭も、自家消費に目的を切り替える際に蓄電池を導入するのはもはや必然と言えます。
現在用いられているメジャーな蓄電池は下記のとおりです。
- 鉛蓄電池
- ニッケル水素電池
- リチウムイオン電池
- NAS電池
鉛蓄電池には原価の安い鉛が使用されているため容量あたりの電力単価が安く、大電流の放電ができるメリットがありますが、使用経過によって充電性能が劣化して電池寿命が大幅に低下してしまうというデメリットを持ちます。
このようなメリット・デメリットを併せ持つ鉛蓄電池ですが、今後も各車両のバッテリーとして使用され続けられることが予測される私たちの生活に欠かせない蓄電池の一つと言えるでしょう。
ニッケル水素電池はプラス極にオキシ水素化ニッケル(NiOOH)、マイナス極に水素吸蔵合金、そして電解液に水酸化カリウム水溶液が使用されていますが、このニッケル水素電池の画期的な点は、気体である水素を効率よく電池に使用できるようにした点です。
金属の中に水素を閉じ込めた水素吸蔵合金が発明されたことによって、電池の中に効率的に水素を蓄えることを可能にしました。
この水素吸蔵合金は自らの体積の1000倍もの水素を蓄えることができるため、効率よく機体である水素を蓄電池内に閉じ込めることができます。
リチウムイオン電池はニッケル水素電池に見られるメモリー効果が発生しないため、頻繁な充放電や満タン時の充電が多くなるノートパソコンやモバイル機器に最適なことで、今では大半のモバイル機器の充電池として利用されています。
また定格放電が3.6Vと小型ながら大きくで超寿命というメリットがあり、近年は中型化、大型化にも成功したことから、電気自動車のバッテリーや家庭用蓄電池としても使用されています。
NAS電池は日本ガイシが研究開発したメガワット級の電力貯蔵設備を可能とした世界初の蓄電池です。メガワット級の電子貯蔵が可能なのに安価な点、設置場所の制約が少ないことが特徴であり大きなメリットと言えるでしょう。しかし、使用されている硫黄(S)とナトリウム(Na)が危険物指定されている点や、作業時には作業温度を300度に維持する必要があるため、取り扱い上での安全性が懸念されているというデメリットがあります。
アモルファスシリコンセル太陽電池
太陽電池は高価で特殊用途でしか使えないという常識を覆した「アモルファスシリコンセル太陽電池(非晶質シリコンを使い製造された太陽電池で、従来の電池と比べ機械強度・耐摩耗性・電気特性が高いといった特徴があります)」は、現在ソーラーパネルへの設置や利用が増加しているため、今後も大きな成長が見込まれています。また、費用対効果の高いソーラーパネルの増加により、2028年までにCIGS(Copper Indium Gallium Selenide。太陽電池によく利用される素材の一つ)の需要が増加することも予想されています。さらに、太陽電池モジュールの低コスト製造と効率の向上により、太陽エネルギー産業におけるテルル化カドミウム(太陽電池の材料として用いられる無機化合物)の需要が増加することも期待されます。
ペロブスカイト太陽電池(戦略的開発投資)
ペロブスカイト太陽電池を“シリコンに対抗しうるゲームチェンジャー”と位置づけ、長期的にはシリコンと置き換えることも念頭に、官民を挙げ他国に先駆けて実用化を目指す動きが活発化している。
– 米国では、NREL等の国研が中心となって官民共同で「米国先進ペロブスカイト製造コンソーシアム(US-MAP)」を設立し、基盤技術や製造技術、評価手法の開発等に取り組んでいる。
– 欧州(EU)においても、官民によるプラットフォームが設置され共同で基盤技術、製造技術の開発等を進めている。
これまで様々な種類の太陽電池が開発され、大きくシリコン系、化合物系、有機系の3種類に分類される。現在普及している太陽電池の95%以上はシリコン系太陽電池。 シリコン系以外の太陽電池の一部は、既に実用化しているものの、現状ではコストを含む性能面でシリコン系に対して競争力を持つ見込みが立っていない状況。 しかしながら、有機系のペロブスカイト太陽電池は、直近7年間で変換効率が約2倍に向上(シリコン系の約4倍のスピード)するなど、飛躍的な成長を遂げており、シリコン系に対抗しうる太陽電池として有望視されている。
FITの動向と対策
太陽光発電によって作られた余剰電力は買い取ってもらえるが、買取り金額は毎年更新され大きく低下しているため、今後の普及への影響は大きい。
期間終了後の選択肢は下記のとうり
- 今まで通りに電力会社に余剰電力を売電する
- 新電力の企業と契約して余剰電力を売電する
- 蓄電池やEVに蓄電して夜間に使う
- 可能な限りの電力を自宅で消費してしまう
設置コストも下落
売電価格は右肩下がりですが、実は太陽光発電システムの設置費用も右肩下がりです。経済産業省が公表しているデータでは、平成23年10月に「46.8万円/kW」だった設置費用は、平成26年10月には「36.4万円/kW」となり、平成28年9月時点では「35.4万円/kW」まで下がっているのです。(2019年時点では「約30万円/kW」と公表。)
上記の売電価格の下落を設置コストが打ち消しているので、収支としてはあまり変わらない状況になっている。
産業用メガソーラー100MW級 (事例紹介)
大規模システム100MW以上をメガソーラーと呼び、日本のみならず海外でも大規模なシステムが既に多く建設されています。その中のいくつかを参考までにご紹介します。
長崎県 宇久島メガソーラーパーク 430MW 世界最大
(14万世帯分の年間電力消費量に相当)
島の面積の約4分の1に相当する630万平方メートルの用地に172万枚にのぼる太陽光パネルを設置する。日本最大のメガソーラーになる見込みだ。年間の発電量は5億kWhにのぼり、一般家庭で約14万世帯の使用量に相当する。宇久島が属する佐世保市の総世帯数(約10万世帯)さえも上回る規模になる。
発電した電力は九州本土まで約65キロメートルの距離を海底ケーブルで送って、九州電力に売電する
UAEメガソーラー
ドバイやアブダビの中心街は高層ビルが立ち並ぶ近代的な都市だが、市街地から離れれば茫洋とした砂漠がはてしなく広がる。
そういった砂漠の真ん中に、2020年までに総容量1GW(1000MW)、2030年までに同5GWの「ギガソーラー」を稼働させるという壮大な計画をドバイ首長国政府は2012年に打ち出した。その達成に向けて開発を着々と進めている
浮体式水上メガソーラー
荒れた広大な水域がエコ・エネルギーを生むサステナブルな場所へ― ―。石炭の産地として知られる中国・安徽省にある淮南市。同市では、多雨な気候も影響して石炭の採掘跡地に水が流れ込み、水深4~10メートルの巨大な水たまりができていた。鉱山跡であるため水には鉱物が混ざって水質汚濁が進み、一帯は使いものにならない場所となっていた。
そのスペースに目をつけたのが、中国の大手太陽光発電事業向けパワーコンディショナ・サプライヤーであるサングロウ社だ。空いた水上にソーラーパネルを張り巡らせたことで、邪魔者扱いされていた水域がエネルギーを生み出すエリアに。水上でメガソーラーを展開することで、土地資源の有効利用も実現した。
インドのメガソーラー
インドの北西部ラジャスタン州タール砂漠:
2020年3月に稼働を開始した世界最大規模の発電量を誇る太陽光発電施設『バドラ・ソーラーパーク』だ。東京ドーム約1200個以上という広大な敷地内におよそ1000万枚の太陽光パネルが設置されている。
モロッコのワルザザートで太陽熱発電所
中国電力建設集団傘下の山東電力建設第三工程有限公司は2015年より、モロッコのワルザザートで太陽熱発電所2・3期プロジェクトの建設を担当している。同発電所は世界最大規模の太陽熱発電所となる。2期プロジェクトのトラフ式太陽熱発電所はすでに稼働開始しており、3期タワー式太陽熱発電所もこのほど初の送電を無事完了した。プロジェクトの完全な竣工後、同発電所はモロッコの100万世帯以上にクリーンエネルギーを提供し、余剰電力を欧州に輸出することも可能となる。
道路を太陽光発電所に
「Wattway」は、道路建設会社のコラス社がフランス国立太陽エネルギー研究所との5年にわたる
共同研究で完成させたもの。このたび、フランスのノルマンディー地方で全長約1kmに渡って設置
されました。距離は短めですが、約2,800m²のソーラーパネルが敷き詰められています。
厚さはわずか7ミリながら、車がスリップしないようにざらざらとしたアスファルト状に加工されて
いて、雨などの天候にも左右されず発電を行うことができます。
Solar Mobiway
太陽光発電サンガスタジアム
ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク
動向のまとめ
開発: より効率の良いソーラーセルの開発競争は激化しており、予測では5-10年以内に、画期的なソーラーセルの開発がされると考えられています。蓄電池の開発と合わせて、革新が起こり、場合によっては化石燃料がほとんど不要になる可能性もあります。
大規模化:住宅用途とは別に事業用のPVシステムは巨大化が進み、エネルギー需給の状況が大きく変化する可能性があります。そうなれば、現在冒頭で述べた計画停電とかの問題がなくなるとともに原子力に依存しないより安全な電力供給ができてきます。
住宅・ビルの標準装備化: 東京都で新築住宅に太陽光パネルの標準装備を条例化する検討がされていますが、おそらく将来的にはすべての建物に自家消費型の太陽光パネルの設置がされるようになるでしょう。
スマートシティ: 将来電気自動車が広く普及する場合に、その電源供給の一つとして太陽光パネルは使われるでしょう。また、都市計画の中に、地域ごとに発電できる分散化した電源システムが普及してくると考えられます。
スマートシティ・先行モデル
荒尾市
熊本県の荒尾市は、エネルギーの地産地消やさりげないセンシングと日常人間ドックなどを目指したウェルビーイングスマートシティに取組んでいる。
荒尾市は2017年に三井物産と再生エネルギーの活用などエネルギー分野で締結しました。これにより設置したメガソーラとバイオマス発電だけで、市内の一般家庭で使う電力の約2倍近くを調達することができています。
さいたま市(スマート・ターミナル・シティ)
東京都心から20~40㎞に位置する人口132万人の政令指定都市、さいたま市。埼玉スタジアム2002が立地し、「スマートシティさいたまモデル」を構築する「美園地区」と、新幹線6路線が集まる交通結節点である「大宮地区」の2地区でスマートシティの取組を推進している。
Floating Solar in Vietnam
アジア開発銀行とダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社は、ベトナム初となる浮上式大型太陽光発電設備を提供
アジア開発銀行(ADB)は本日、ダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社(DHD)と、定格要領47.5メガワット(MW)の発電を可能とする浮上式大型太陽光発電設備の導入に向けて3,700万ドルの融資契約に 署名した。同事業は、175 MWのダーミー水力発電所の貯水湖上に設置される。
同事業はベトナムで初となるの浮上式大型太陽光発電パネルの設置事業であり、東南アジアで最大規模になる。
Thank you