さて、一番身近な太陽光発電といえば、住宅の屋根に設置されたソーラーパネルだと思います。太陽光発電で売電し利益を得るスキームができたのは20年前で、既に多数の住宅で太陽光発電が利用されています。現在日本全国で160万戸はどの太陽光発電システムが稼働し、持ち家での比率は5%になっています。ライフサイクルを既に迎え、再構築が必要な設備も多く出始めました。
特に、売電価格が下落し、現在では売電利益を求めて太陽光発電を設置するというモーティベーションは少なくなり、それよりは自分の電気は自分で調達するという自家発電にスキームがシフトをはじめました。
一方、ソーラーパネルの効率の向上と、価格の低下動向も重要なファクターとなっており、今後の普及に向けて、政府の補助金などの支援も活発化してきております。
いずれにしても、まずは住宅用太陽光発電システムの基本知識が必要なので、このチャプターでは住宅用太陽光発電システムの基本構成などを解説していきたいと思います。
住宅用システムの構成
住宅用の太陽光発電システムの構成要素はそれほど多くありません。
売電のイメージ図
昼間はソーラーパネルで発電しますが、全部は使い切れないので、余った電気を売電します。そして夜には電力会社からの電力を買電し使用します。イメージを下記に示します。
次に、それぞれのコンポーネントの具体例を示します。写真を見ると大体のイメージがわかります。
ソーラーパネル(モジュール)
言うまでもなく太陽光のエネルギーを電気に変換する素子で、一番重要なコンポーネントとなります。
ソーラーパネルの性能と価格が普及の大きなポイントとなるので、多くの製造メーカーの中から最適なものを選ぶことが重要です。
ソーラーパネルを構成する太陽電池は、n型半導体とp型半導体という、導線によって結ばれた2種類の半導体が張り合わされている構造になっています。
太陽光が半導体に当たると、n型半導体のほうにマイナスの電子、p型半導体のほうにプラスの正孔が集まり、導線を伝わって電子が正孔のほうへ移動します。この電子の流れを利用して電気を発生させするのが、ソーラーパネルで太陽光発電を行う原理です。
太陽電池として使用できる最小の単位(セル)をつなぎ合わせ、ガラスやプラスチックで保護して、設置しやすくしたものを太陽電池パネルもしくは太陽電池モジュールと呼んでいます。家の屋根等に設置されているものはモジュールを並べたものでアレイと言います。
太陽光発電システムとして製品化されている太陽電池の種類には多結晶シリコン型・単結晶シリコン型・薄膜系シリコンアモルファス・CIS系等があります。
シリコン系
ソーラーパネルのなかで、最も一般的なのがシリコン系です。そして、シリコン系のソーラーパネルは、単結晶タイプ、多結晶タイプ、アモルファスシリコン、HIT(ヘテロ接合型)の4つに分類されます。このうち日本の家庭用設備として現在主流となっているのは単結晶シリコンです。
化合物系
銅やインジウムなどの物質を混ぜ合わせて作られたソーラーパネルは化合物系と呼ばれます。化合物系は、シリコンを使用していないため低コストかつ省資源で量産でき、経年劣化も少ないのが特徴です。
有機系
有機系は、有機半導体のpn接合を利用した光起電力効果にて電気を生成します。薄く軽量で自由に曲げることが可能で、ソーラーパネルそのものに着色できる、製造するコストが安いといったメリットがあります。ただ、有機系に関しては実用化されておらず、住宅用にはまだ使われていません。
参考情報:開発中のもの(by京セラ):フレキシブル結晶シリコン
住宅用と産業用
太陽光発電には住宅用と産業用があります。太陽光発電システムを運用するには国に認定申請が必要。認定には種類があり、出力10kW未満のものが住宅用、出力が10kW以上で全量買取を行う設備が産業用。認定の種類によって固定買取価格制度の価格設定が異なるだけでなく、運用の際の事業者の義務も異なる。(もう少し詳しい説明は、産業用システムのタブを御覧ください。)
住宅用として多く利用されているソーラーパネルはシリコン系の単結晶パネル。単結晶パネルは変換効率が高く、枚数を多く設置できない住宅屋根用に向いています。
一方、産業用として主流となっているのが多結晶パネルです。産業用の場合、導入コストの安さから依然多結晶パネルが多く使われています。
発電量の目安
太陽光発電の1日の発電量
発電量は時間帯、季節、で大きく変動するので、一年間を通してのおおよその発電量の目安が必要となります。例えば、下図のように時間帯により発電量は変化します。
一日当たりの発電量は2.5~3.8kWh/kW、一カ月あたりの総発電量はおよそ80~120kWh/kWの間で季節変動します。(大雑把にいうと、設置容量の3時間分/日、発電できる目安)
例えば、住宅で5KWの設置容量のシステムを導入すると、一日の発電量は 3kWhx5倍=15kWhくらいになります。
昼間在宅者がいる2人世帯の標準家庭では、空調の要らない季節は一日あたりの消費電力は平均で7.7kWh程度、これが猛暑の日になるとエアコンの稼働率が上がり、1時間あたりエアコンだけで平均370W消費しながら1日の電力使用量を倍の17.4kWhまで押し上げます。
これで、見ると太陽光発電を設置するとかなりの電気量を自宅でまかなえるということがわかります。
売電して利益を出す為には明らかに不足ではありますが、投資的観点で見るのをやめ、費用を節減する目的で考えれば、極めて有効的で、なおかつ太陽光発電はカーボンニュートラルという世界的な必要性に合致したソリューションであると思われます。
私は、個人的な意見ですが、売電価格が下落してしまった今日では、目的を変えて考えるべきではないかと思います。投資で儲けようという考え方を止めないと普及速度が上がらないし、価格も下がりにくく悪循環になるでしょう。(動向でも述べたように、脱FITの方向にトレンドが向かっています)
変換効率
変換効率はソーラーパネルに照射された太陽光エネルギーのうち、どの程度を電気エネルギーに変換できるかを表しています。基本的には変換効率の良いソーラーパネルほど、性能も高いとされており、性能が高いソーラーパネルのほうが、同じ条件下であってもより多くの電気を発電することが可能です。
変換効率を表す方法には「モジュール変換効率」と「セル変換効率」の2つがあります。
モジュール変換効率
モジュール変換効率は、ソーラーパネルの性能を表す一般的な指標として用いられます。1㎡あたりのソーラーパネルの変換効率を表す指標で、算出するための計算式は以下の通りです。
モジュール変換効率(%)=(モジュール公称最大出力(W)×100)÷(モジュール面積(㎡)×1000(W/㎡))
セル変換効率
セル変換効率は、ソーラーパネルの最小単位であるセルあたりの変換効率を表す指標です。セル変換効率の算出方法は、次の計算式を用います。
セル変換効率(%)=出力電気エネルギー÷太陽光エネルギー×100
屋根への設置方法
屋根置き型
屋根建材型
万一の際の非常用電源として
災害などで停電になった場合、太陽光発電システムを非常用電源として利用することができます。これを自立運転機能といいます。使用できる電力は最大1.5kWで、太陽が出ている時間帯の日射量によりことなりますが、テレビや炊飯器、電気ポット、携帯電話の充電器などの電源として利用することができます。万一の備えとしても見逃すことができません。また蓄電池と組み合わせることによって、よりしっかりとした非常用電源として使うことができます。
設置のプロセス概要
自宅に太陽光発電の設備を導入する場合のプロセスは次のようになります。
Step1 システム設計
発電量のシミュレーション
Step2 見積もり取得から発注契約
見積もり、助成金、融資、資金計画、見積もり比較、業者選定
Step3 工事施工
Step4 竣工検査
Step5 運転開始
Step6 保守
下図に示すように、関連する組織が多いので、それらの連係手続きが煩雑になるので、販売店/施工業者によってサービスの度合いが大きく変わります。特に、補助金などを利用する場合には、それらの手続きに精通した業者を選ぶことが大切になってくるでしょう。
住宅用太陽光発電システムの第3者保有
太陽光発電システムを自己所有するのではなく第三者(電力サービス会社)に委託して、初期費用なしで、システムを構築する方法です。面倒なところがなくなりますが、当然投資的なメリットは少なくなります。
太陽電池の種類と特徴
ソーラーセルも現在では多くのメーカーが開発競争と繰り広げており、多くの種類が市場に出回っております。この中で、メーカーの選定にあたり、発電効率などの違いと特徴を知っておく必要があります。
太陽電池の種類
市場の大部分を占めるのが結晶シリコン系の太陽電池。市場によって単結晶/多結晶の割合も異なる印象がありますが、特に日本ではより高効率の単結晶が好まれる傾向があります。
メーカー価格比較(参考例)
国内外のソーラーパネルメーカーは、それぞれ大きさや効率といったスペックの異なる太陽光パネルを販売していますが、1キロワットあたりの単価を比較することでそのメーカーの製品が安いのか、高いのかを一律に比較することができます。以下は主要メーカーの主力製品の単価相場をネット検索で比較し一覧で比較したもので、実際の値引きなどは含まれていなのですが、初期検討の目安として利用できます。
競争激化で世界シェアも年々変化している
価格もシェアも変化を続けているので、常に最新の情報を収集し、最適なメーカーからソーラーパネルを選定購入するとよいと思われます。
50kW未満の低圧連系太陽光発電(準産業用)
もし、自分の土地に余裕がある場合には、手間を少なくした産業用のPV投資が可能です。
10kW未満の主に住宅用の太陽光発電と、1,000kW(1MW)以上の大規模メガソーラーの間の10kW~1,000kWの太陽光発電設備は「ミドルソーラー」と呼ばれ、投資先として人気を集めています。中でも「プチソーラー」などとも呼ばれる10kW以上50kW未満の太陽光発電が特に注目を集めています。
その理由として、10kW以上は全量買取制度が適用される他、50kW未満だと系統への低圧連系が可能になり、高圧連系と比べて手間や経費が少なくなることが挙げられます。つまり、10kW~50kWは太陽光発電を始めるには一番コスパのよいシステムとなります。
低圧連系のメリット(後述の説明を参考にしてください)
固定価格買取制度の設備認定が手軽
固定価格買取制度を申請する際の設備認定が、50kW未満の場合インターネットでできる。
キュービクル式高圧受電設備の設置が不要
キュービクル式高圧受電設備(単にキュービクルとも呼ばれる)は、高圧連系をする場合に必要となる設備です。太陽光発電の接続箱とパワーコンディショナーの間に接続され、発電設備からの高圧の電力を、系統に支障のない電圧まで変圧する役割をします。(具体的には6600Vの電気を100V・200Vに変換する。)
この設備に、初期費用として100~500万円程度(規模によって価格は変わる)が必要となるほか、保守にも手間とコストがかかってきます。
50kW未満の低圧連系の場合は、この設備の設置が不要となります。
電力会社との接続協議が不要
50kW以上の高圧連系設備を建設する場合、電力会社に協議をする必要があります。協議のために20万円程度の費用がかかるほか、実際に許可が下りるまで数カ月かかるために、事業に遅れが生じる場合もあります。また、協議の末接続が万が一拒否されても、協議にかかった費用が返ってこないということも考慮に入れておくとよさそうです。
主任技術者の選任と保安規定の届出が不要
電気主任技術者の選任も、50kW以上高圧連系で必須で、50kW未満低圧連系なら免れられる手間の1つ。電気主任技術者は、発電所の設置にあたって工事や維持、運用に関する保安業務の基本事項を定めた保安規定を制作し、提出しなければいけません。
事業者の方でこの人員が確保できない場合に外部委託できるサービスも出てきてはいるものの、いずれにせよ年間で50~70万円程度が必要となります。
設置する土地
50kWの設備であれば、500㎡程度の土地があれば設置が可能です。(太陽光パネルのサイズと重量について)例えば大きな工場の屋根などに設置をする例が多くなってきています。土地を借りる賃料も不要で、ソーラーパネルの断熱効果により工場の空調費が削減できたりといった副次的なメリットも期待できます。通常のビルなどに比べて耐久性が低い、工場の屋根への負担をより少なくするために、軽量型のパネルも登場しています。
他にもアパートの屋根を活用したり、農地で作物を育てながら太陽光発電を行うソーラーシェアリングも注目されています。
50kWの太陽光発電の価格
相場としては50kWで1,500万円~1,600万円程度が目安です。(ソーラーフロンティア製パネルを陸屋根に設置する場合)
太陽光パネルのサイズ・重量比較表
ソーラーパネル自体の大きさは特に決まった規格がありませんが、パネルを構成する一枚一枚の太陽電池セルは125mm角、6インチ(152.4mm)角、156mm角といったよく使われるサイズがあり、それを縦横に数枚ずつ並べて長方形にしたパネルが一般的です。一枚のパネルに何列・何行のセルを組み合わせるのか、セルとセルの間隔やフレームの大きさはどれくらいが良いかなど、各メーカーで検討されて作られたパネルは、同じセル数であっても数ミリの差が出てくることがあるため、もう一列足したいけど数ミリの差で足せないといった場合などには少しだけ小さいサイズのパネルを作っているメーカーを探してみるといいかもしれません。
耐震への影響
日本は近年地震の被害が多くなっており、特に、既存の建屋に太陽光発電システムを増設するということは、地震耐力に十分配慮する必要があります。
特に築年数の経った木造家屋などでは屋根が重たいと地震の際に揺れが大きくなるため、日本瓦から軽量のスレート瓦などに葺き替えるようなリフォームをする事はよくあります。そこで気になるのが太陽光パネルの耐震に対する影響です。上の表でもご案内しましたが、太陽光パネルの重さは1㎡で12~16kg程度、平均的な4kWの容量のシステムでパネルの総重量は240〜470kgになります。
対して一般的な屋根材の重さは日本瓦の場合1㎡あたり約40~50kg、化粧スレートでも約25kg。標準的な30㎡の大きさの屋根だと屋根材だけで750〜1,500kgの重さになります。それに加えて300kg、400kg増えると、新築でもない限りは家屋に与える影響を含めて安全性をきちんと確認し、補強が必要であれば耐震補強工事も含めて導入を検討する必要があります。
架台・工法
そのままパネルを設置するのは無理かもしれない、となった場合、100万円以上かかる事が多い耐震工事を行う前に、パネルや架台・工法の選択で対応できないか考えることもできます。
ソーラーパネルを屋根に設置するには専用の架台を使って固定させるのですが、この架台だけで住宅用のもので1㎡あたり7kg程度になります。ソーラーパネルが1㎡が12〜16kgありますので、架台だけでもパネルの半分の重さがあるということになります。
一方でソーラーパネルを付けても耐震性をクリアできるよう、屋根自体を軽量化できるような架台と工法を提案しているメーカーもあります。国内パネルメーカーとして高いシェアを誇るパナソニックは、「野地ぴたFタイプ」という工法を開発。これは、通常の瓦の代わりにソーラーパネルを敷くという、いわゆる建材型のソーラーパネルと言えるものですが、需要の限られた一般的な建材型(瓦型)ソーラーパネルではなく人気が高い普及品パネルを専用の架台に載せるだけなので価格を抑えられる可能性が高いと考えられます。
例えば現在1260kgの平板陶器瓦が載っている切妻屋根(長方形2面で構成された三角屋根)を、葺き替えのタイミングで一面をソーラーパネルに葺き替え、反対側にはこれまでと同じ瓦を敷いていく場合、瓦だけの時と比べて屋根部分の重量が約500kg軽くなります。さらに使用する瓦の枚数が減るため屋根葺きにかかわるコストが削減できるメリットもあります。もし本気で耐震、減震をお考えの場合は化粧スレート瓦とソーラーパネルでの葺き替えだとさらに安全性が高まると考えられます。一般的な陶器瓦の半分のスレート瓦と、さらに軽いソーラーパネルで葺き替えることで屋根の重量は今までより半分以上も軽い約580kgまで軽量化することができます。
どのメーカーにおいても結晶型のソーラーパネルは重量が10㎡あたり120kg前後です。その中でも群を抜いて軽量なのが、フジプレアムのパネルシリーズ「希」で、シリコン系において標準的な重さの約半分の重さとなっており、さらに出力あたりで見ても断トツの軽さです。パネル価格はシリコン系ソーラーパネルの市場相場と比べて高めとなっていますが、屋根の耐久性が気になる築年数の多い物件や、屋根のつくりが簡易的な工場などで採用されることが多いようです。
季節・時間帯・気候の変動
陽光発電の年間発電量は地域や導入するシステムの種類だけでなく、季節や時間帯、気候によっても変化します。
太陽光発電の平均発電量がもっとも多い季節は春で、4月、5月ごろに発電効率が高まります。冬は日射量が減るため、12月ごろの発電量がもっとも少なくなる傾向です。
夏は太陽光発電のシステムが高温になることによる出力低下で発電効率が落ち、発電量は春より少なくなります。それでは、どの程度の変動になるのか概要を把握しましょう。
太陽光発電の発電量は、日照が最大となる12時ごろをピークに、11時から13時の時間帯でグラフが弧を描きます。NEDO日射量データベースをもとに算出すると、11時から13時の時間帯における発電量は、1日の約4割です。
太陽光発電の発電量は、晴天時にもっとも多くなります。曇天時でも晴天時の半分程度は発電が可能です。雨天時は日照が少なくなるため、ほとんど発電できません。
太陽光発電の発電量を増やすためには、太陽光パネルへの日照量やシステムの発電効率を最大化する必要があります。効率化するための主なポイントは次の通りです。
- パネルの向き、パネルの傾斜角度
- 影を避ける
- メンテナンス、掃除
損失係数(発電量を下げる要因)
さて、経年変化など、定格の性能がいろいろな原因によって下げられるのが実際のシステムには発生します。これを計算上では損失係数という数字で表現します。
太陽光発電システムの1日あたりの発電量および年間発電量は、以下の計算式で導き出すことができます。
・発電量(1日)=1日あたりの平均日射量(H)×システムの容量(P)×損失係数(K)
・年間発電量(Ep)=1日あたりの平均日射量(H)×システムの容量(P)×損失係数(K)×365÷1
以下、上記の計算式で用いられる各要素の解説です。
- 年間発電量(Ep):年間で予想される発電量(kWh)
- 1日あたりの平均日射量(H):太陽光発電の設置面積における1日あたりの平均日射量
- システムの容量(P):設置した太陽光発電のシステム容量(kW)
- 損失係数(K):損失係数は太陽光発電が発電する上で発生する損失(ロス)
ここで、その損失の原因を列挙すると次のような項目となります。
気温(25度以上)
太陽光パネルの公称最大出力は、気温25度の環境下で測定された数値。25度を1度超えるたびに0.5%ほど発電量が低下する。従って、夏場など日射量が多くても高温の季節になると、損失係数も多くなる。
パワーコンディショナ-
パワーコンディショナは、太陽光発電で創った直流電気を家庭内の電力系統と連系するための交流電気に変換する役割などを担う機器です。この直流から交流への変換時に約5%のロスが発生します。なお、パワーコンディショナの変換効率は、どのメーカーも95%以上の高い数値を誇っています。
パネル受光面の汚れ
太陽光パネルに汚れがつくと、発電量の損失に繋がってしまいます。鳥の糞などが代表的な汚れですが、例えば落ち葉がパネルの上に落ちて影ができてしまう場合などでも、発電量は低下してしまいます。太陽光パネル上の部分的な汚れであっても、発電量の低下はそのパネルを接続している回路全体に影響し、大幅な発電量低下につながるため注意が必要。
経年劣化
太陽光パネルは購入から10年間「2.7%」、20年間「5.4%」、30年間「8.1%」の発電量が、経年劣化によって低下すると言われています。なお、メーカーが行っている出力保証では、「10年間で公称最大出力81%以上を保証(パナソニックの場合)」など、年数が過ぎても一定値以上の発電量を保証してくれています。しかし、上記の経年劣化の計算どおりであれば、基本的には出力保証の対象となることはあまり無いと思われます。
パワーコンディショナー: PCS(Power Conditioning System)
パワーコンディショナーは、太陽光発電システムにおいて、作った電力を一般家庭で使えるように変換する機器です。発電した電気を実際に使うためには電力会社から電線を通って送られてくる電気と同じ周波数にすることが必要です。パワーコンディショナーは太陽電池モジュールで発電された直流電力を、送電される電力と同じ交流に変える働きをしています。
また、太陽光発電では天候などの条件によって発電量が安定しません。機種にもよりますが、それを最大限に生かして、安定的に電力を供給できるように調整するMPPT機能(説明はこのチャプターの下の方にあります)を兼ね備えているものもあります。さらに系統連系保護機能として、売電時の安全性を守る機能もあります。
パワーコンディショナーは製品やメーカーによって性能が違います。
- 変換効率
- 最大定格出力
太陽電池モジュールの種類やシステム容量にあわせたパワーコンディショナーを選定する必要がありますが、判断する1つの基準が変換効率です。パワーコンディショナーの変換効率は、太陽電池モジュールで作った電力をロスなく電気として生かせる割合のことを指します。通常ではパワーコンディショナーの変換効率は95~97パーセント程度となっており、数値が高いほどロスが少ないとされます。
もう1つの基準としては、最大定格出力があります。最大定格出力は、パワーコンディショナーが送電できる電力の出力量ですが、パワーコンディショナーの最大定格出力を上回る太陽電池モジュールの出力量はエネルギーとして変換されません。太陽電池モジュールの出力量を加味して選定する必要があります。
しかし、変換効率・最大定格出力が高いパワーコンディショナーは性能がよいとされるため、比較的高価となります。そのため、パワーコンディショナーを選ぶ際には、性能と価格のバランスを考えることが大切です。
パワコンスペックの例(Panasonic)
240NC2はメルカリで誰かが6万円で出品していました。家電と同じ感覚ですね。
この場合、定格入力DC330Vなので、太陽光モジュールの構成は直列並列を組み合わせ、出力が330Vになるように設計する必要がある。たとえば太陽光モジュール一枚の出力が20Vであれば、330/20=16枚を直列にし、その直列回路を並列に並べて必要な電力を得るようにする。トータルの電力は、一枚あたり200Wであれば200Wx枚数となる。
接続箱(例)VBPC240NC2Panasonic
電力会社との連携(系統連系形システム)
日中は太陽光を利用して発電し、夜間や発電量が使用量に満たない場合は、電力会社から電力を購入するものです。使用量を上回る余剰発電電力を電力会社に売却することも可能です。
太陽電池に蓄電池を組み合せる「防災型」もあります。平常時は太陽電池で発電した電力と電力会社からの電力を組み合せて使用し、災害などにより停電が発生した場合には、太陽電池で発電した電力を特定の設備(非常用照明等)にのみ供給します。さらに、太陽光がない夜間や、発電量が使用量に満たない場合は、蓄電池に蓄えておいた電力を利用します。
系統連系の区分
- 高圧連系:50kW以上2MW(2000kW)の設備
- 低圧連系:設備容量が50kW未満(一般家庭や商店)
- 低圧みなし連係:特定の条件では、高圧でなく低圧系統連系できる緩和処置
(詳細は、電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドラインを参照)
電力会社との電力需給契約
太陽光発電システムの設置後、電力会社との電力需給契約を行います。契約を締結することによって、系統連系による売電が可能となります。
電力需給契約
電力需給契約は、太陽光発電システムを電力会社の配電線に接続し、発電電力を電力会社に売電するための契約です。
電力会社から電力を買う一般的な契約は「電力需給契約」であり、それと混同を避けるために、売電の場合の需給契約を「系統連系契約」と呼ぶことがあります。
太陽光発電システムの最大出力が50kW未満の場合は「低圧連系契約」、50kW 以上の場合は「高圧連系契約」となります。系統連系契約の申請手続きは複雑なので、基本的に施工業者が代行します。
逆潮流の確認
太陽光発電システムで発電した電力を電力会社に買い取ってもらうには、連系した系統を通して、電力会社の配電線に電気を送る必要があります。通常の電力供給とは逆向きの電流のため、これを「逆潮流」と呼びます。系統連系後に逆潮流を電力会社に確認してもらうことで、売電できるようになるのです。
逆潮流
系統連系の制御原理(PCS)
ちょっと技術的になりますが、逆潮流で売電するにあたり制御する機能がパワコンには備わっています。
発電モジュールの特性
太陽電池の出力特性-I−V曲線
太陽電池が光を受けて発電する際の出力特性を、縦軸に電流、横軸に電圧をとって表現すると下図のようになります。
このような動作電圧対動作電流のグラフは、太陽電池セルや太陽電池モジュールの特性を表わすグラフとしてI−V曲線とも呼ばれます。
- 最適動作点: I−V曲線上で動作電圧と動作電流の積が最も大きくなる点
- 最大出力動作電圧Vpm: 最適動作点での動作電圧
- 最大出力動作電流Ipm: 最適動作点での動作電流
- 開放電圧VOC: 太陽電池の出力端子に負荷等を何も接続せず、開放した状態での電圧
- 短絡電流ISC: 太陽電池の出力端子間を短絡させたときに流れる電流
MPPT制御(電力最大化アルゴリズム)
PCSには、インバータ機能の他に、MPPT制御という出力電力を日照変化に追随させてコントロールするシステムが装備されています。
電力―電圧特性(PVカーブ)で示されるように太陽光モジュールは、動作する電圧によって取り出せる電力が異なります。そして、最も大きい発電電力である点(最大電力点)は、気象の影響を受ける日射強度や太陽電池温度などによって大きく異なります。そこで、安定して最大電力点で動作させるアルゴリズムを持ったMPPT制御がPCSには組み込まれています。
まとめ
さて住宅用の太陽光発電システムについて主要なポイントを説明してきましたが、将来的にはNon-FITで自家消費型をベースとした形が主流になってくるのではないかと個人的には考えております。
以下まとめとして、3点を説明いたします。
自家消費型+蓄電池システム
経済的効果
つくった電気の使用で電気代を削減できるのが自家消費太陽光発電(以下自家消費)の特徴です。自家消費のみの導入では、電力の使用量が最も多い時間帯の、電力使用量(電力購入量)を削減することで電力量料金を削減します。対して、自家消費と蓄電池の併用は、電力量料金の削減に加え、貯めこんだ電力を電気料金の高い昼間に使用することで電力消費量の波を平準化し、最も単価が高い時間帯の電気使用を削減。電気の基本料金も削減可能とします。また、パネルの過積載率が上がることで発電ロスを軽減し、発電量をさらに増加させることが可能です。したがって、太陽光発電+蓄電池の導入を行うことで、大幅な電気料金の削減が実現し、大きな経済的効果をもたらします。
防災効果
近年自然災害による停電などが頻発しています。蓄電池を導入するもう一つの大きなメリットは、停電など電気供給がストップした場合でも、発電設備が無事であれば平時同様に発電し、電気が使えることです。また、産業用においては「BCP(事業継続計画)」対策や非常用電源確保の観点から、蓄電池の導入は一般的になりつつあります。
環境貢献(SDGs)
蓄電池は太陽光発電と併用することで、売電時の送電ロスを軽減。電力を最大限に活用できるため、環境負荷の低減に繋がります。これにより、SDGsを達成するうえで必須ともいえるCO2の削減を図り、企業価値の向上に寄与します。
Thank you for Reading