マイクロデーターセンター

新潮流: マイクロデーターセンター(超小型化データーセンター)

データーセンターについては10年前は何も存在しなかった状態から、現在では世界中に500を超える巨大なハイパースケールデータセンターが出現している。メガクラウドプロバイダーのAmazon、Apple、Facebook、Google、およびMicrosoftは、市場が従来のオンプレミスからクラウドに移行するにつれて、 データセンターが ハイパースケール 化する傾向は変わらない。

同時に、データが生成および消費されている「エッジ」に近い場所にあるマイクロデータセンターが人気を集める傾向も並行して拡大している。ネットワークのエッジにあるこれらのデータセンターは、エッジデータセンターと呼ばれ、通常、大規模なデータセンターよりもはるかに小さく、既存のインフラを補完する存在だ。

世界の潮流はハイパースケール化であることは間違いないが、同時に超小型化の研究や実験も始まっている。マイクロデーターセンターである。背景にあるのは、環境への対応、エッジコンピューティングの需要の拡大、そしてそれを支える技術の進歩である。

KDDIと三菱重工、NECネッツエスアイが小型データセンターを実証実験

サーバ冷却装置と小型データセンター

液体でサーバーを冷却する液浸冷却装置を活用し、それらをコンテナーに収容した小型データセンターの実現および国内における2022年度の社会実装を目指して実証実験を開始。

消費電力を約35%削減する見込みで、電力を大量に消費するデータセンターの課題に対応すると同時に、二酸化炭素の排出抑制が期待できる。また、データセンターの置き場所の選択肢が増え、設置環境や条件が大きく緩和すると期待される。これにより既存のデータセンターの処理を補完し、高速かつ遅延の少ないデータ処理を可能にする。高性能で高密度に実装された冷却機構は、より大型のデータセンターにもサーバー実装数の増加やエネルギー消費量の低減といったソリューションを提供できる。

例:東芝モジュール型データーセンター

背景の理由

エッジコンピューティングは、データをデータソースやエンドユーザーの近くで処理することによってレイテンシを低減する手法であり、マイクロデータセンターはその実現方法の1つだ。マイクロデータセンターはエッジデータセンターとも呼ばれ、通常はサーバやストレージ、無停電電源装置(UPS)、冷却装置など、必要なインフラ要素を全て収容したモジュール型のシステムをいう。

IOTの拡大

IoT(モノのインターネット)機器から大量のデータがデータセンターに送られるようになる中、このエッジコンピューティングとマイクロデータセンターという2つの概念が中心的なテーマとなっている。

 素早いレスポンスを必要とするIoTデバイスや4K動画を生成するIoTデバイスの爆発的に増加に伴い、トラフィックが激増しており、そうしたデータを全て中央集中型のクラウドに集約する意味はなくなっている。 企業はマイクロデータセンターについても、オフィスや倉庫、工場の生産現場、コロケーション施設など、どこであれその価値を最大限に発揮できる場所に設置することが可能だ。

5Gの拡大

 さらに、5Gサービスがスタートしたことで通信速度が向上しAIや機械学習などをはじめとした高速かつ高度な処理ができる技術が登場してきたことも、大きな影響を与えている。

 このような環境変化により、DXを導入するにあたっては、かつて考えられていたようにクラウドコンピューティングのみを活用するだけでは処理が難しいワークロードが急増している。

 具体的には、データの増加は通信遅延や通信輻輳(ふくそう)につながるほか、重量データを扱うケースが増えたことによりこれまで以上に広い通信帯域を確保する必要があるため、クラウド環境にすべてのデータを送受信するとコストがかかりすぎてしまう。さらには各国の規制などからデータの保管場所を明確にしなければならないケースもあり、その場合はクラウドでは対応できないなどの課題がある。5Gの成長によりエッジデータセンターに課せられる需要は、現在のデータセンターとはかなり異なり、より小規模で、消費電力が少ないことが要求される。

その他のエッジ需要

近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入があらゆる業界で盛んになってきている。これは、ウェアラブル端末やスマートフォン、タブレット端末など、IoTセンサーを備えた機器が急速に普及したことで、取得できるデータの量が急増していることや、4K・8Kといった高精細の動画データやVR・AR関連の3D画像データなど、重量データの利用が容易になったことなどが関連している。

上記の理由からマイクロデーターセンターは需要が拡大すると同時に、あらゆるニーズに答えるウルトラ多様化の方向に進むことと、また、価格の低廉化とコモディティ化が進むと見られる。

壁掛け可能な6Uサイズのマイクロデータセンター

エッジコンピューティングに関する要件 は厳しい

 オンライン学習が進んでいる教育業界でも、生徒の個人情報を保護しつつデジタルプラットフォームを活用するなど、エッジコンピューティング活用が進んでいるほか、遠隔診療など医療のデジタル変革に伴うデータ活用が進む医療分野でも活用が進む可能性がある。また、医療分野においては、医療機関に保管された診療情報や画像データは高い機密性を保たなければならないこともあり、エッジコンピューティングのニーズが高いようだ。

 これら各業種において、実際にエッジコンピューティングのシステムを導入する際の利用環境や要件について、たとえば、サーバルームやデータセンターなどはIT設備のために温度・湿度が最適化されているが、店舗や学校においては、24時間365日一定の温度管理を行うことは難しく、騒音に対しても敏感である。また、工場や倉庫などでは、温度・湿度やホコリ、振動など環境の管理が難しいことも多い。このようにエッジコンピューティングを構築する際、必ずしも IT専用の設置場所が確保できるわけではない。ビジネスの要求に応じてIT専用の設置場所や設備が整っていない環境に対しても、エッジインフラを展開する必要がある。また、ビジネスの可用性(Availability)を確保するために、システムの運用にはデータセンター並みの信頼性が求められるでしょう。さらに、エッジコンピューティングは、複数の離れた場所に存在することが多いため、すべての場所に管理者を常駐させることは難しく、リモートに対応した運用管理ツールも必要になるかと思います。加えて、同じソリューションを多拠点に、場合によってはグローバルに供給できる展開力も必要になる。

つまり、エッジコンピューティングにはデーターセンターの要件と同じものが要求される。

参入企業の例-1

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設置場所・信頼性・運用管理・多拠点展開という要件を考慮し、 ラックや電源保護、配電、物理セキュリティ、監視ソフトウェア、サービスなどを組み合わせ、データセンターと同等の堅牢性を目指しているようだ。 (詳細は同社のHP等で調査してください。)

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参入企業の例-2

もう一社の例は、EdgeConnexという会社。

EdgeConneX | Hyperlocal to Hyperscale Data Center Provider
We are the leading Edge Data Center provider experts bringing speed, agility and security to your business and customers...

まだ、日本には進出していないようだが、近い将来アジア圏にも拡大してくるかもしれない。

「マイクロデータセンター」市場動向

市場は急成長の見通し

マイクロデータセンターの市場はまだ小さいが、急成長中だ。Gartnerの予測によると、2021年までにエンタープライズ企業の25%がマイクロデータセンターを導入している見通しだという。

市場の要求は自動運転などで、遅延は致命的だ。「複数のロケーションから利用するレガシーシステムが多数あるが、遠隔データーセンターでは、遅延は悪夢となり得る。サイト間のネットワーク帯域をどれだけ増強したとしてもだ。マイクロデータセンターの導入を検討する企業には、事業者選びで3つの選択肢がある。インフラ提供業者は、全てのハードウェアを1社のベンダーがまとめて提供するワンストップショップの役割を果たす。ファシリティー(設備機器)の専門業者は多くの場合、特定のハードウェアに依存せず、さまざまなモジュールの選択肢を提供するが、別途ハードウェアが必要となる場合もある。地域限定の事業者の場合、地元の顧客向けに充実したサービスを提供してくれる。ただしそうした事業者は経営規模が小さいが故に安定性の面で不安があり、買収や合併の標的とされるリスクが高い。いろいろな状況は存在するが、 マイクロデータセンターの市場の拡大は間違いないだろう。

セキュリティや管理の問題

 企業は多くの場合、従来のデータセンターとは別の場所にマイクロデータセンターを設置する。「そのためIT部門は機器のセキュリティと信頼性を確保し、頻繁に修理しなくても確実に動作するようにしなければならない」

 マイクロデータセンターは分散して配置されるものなので、管理も重要となる。

「何千もの現場に技術者を派遣したくはない。受け取る情報は具体的で詳細なものであってほしい。願わくは誰も現場に送らずに問題を解決できるようにしたい」ユーザー企業の要望だ。

 ベンダーロックインも懸念の1つだ。

 マイクロデータセンターのベンダーを選ぶ際は4つの手順を踏むよう推奨している。まずは要件を明確化する。次に、各ベンダーをそれぞれ長所と短所に基づき採点する。その採点結果を基にベンダー候補をリスト化し、そのうち少なくとも2社と契約を交渉するという4段階の手順だ。

エッジとクラウドの関係は競合か共存か

エッジコンピューティングの急増がクラウドの今後にどのような影響を及ぼすかについて、専門家の意見は分かれる。

データの重心がデータセンターやクラウドからエッジへと移行するにつれ、エッジがデータ処理の場所になっていく。つまりはエッジがクラウドを侵食するということも考えられる。

だが一方では、エッジとクラウドは当然ながら共存関係にあり、競合関係にはないとの見方もある。今日の中央集中型クラウドモデルのままでは、エッジコンピューティングとはうまく調和しない。だが先進的なクラウド事業者はこの2つの概念を共存させる方法を編み出しつつある。MicrosoftとAmazon Web Services(AWS)はそれぞれIoTソリューションの構築と運用を支援するクラウドサービスとして「Azure IoT Suite」と「AWS Greengrass」を提供している。

 おそらく→「エッジはクラウドと競合するのではなく、クラウドを補完する存在となる

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