ブロックチェーン技術の最近の動向と方向
ブロックチェーンは一体何なのか?という基本情報は、別タブ(ブロックチェーンの基礎)にまとめておりますので、まずはそちらから御覧ください。
ここでは、もう一歩進めてブロックチェーンの現状やビジネスへの応用などについて説明していきたいと思います。
ブロックチェーンは、「AI」「IoT」と並んで、DX(デジタルトランスフォーメーション)分野で期待される有望技術の一つです。
ブロックチェーンの技術の応用範囲は極めて広く、将来では多くの産業分野に影響を与えると考えられています。
一般に知られている仮想通貨(暗号資産)
主題は暗号資産ではなく、ブロックチェーンですが、暗号資産が一般に知れ渡っているので、まずは簡単に仮想通貨についてまとめておきます。
(注):仮想通貨は、名称が暗号資産に変更されました
この他にブロックチェーンの技術でWeb3.0が話題になっていますが、これは別のタブで解説をしていきます。
日銀が進める「デジタル円」2022-12-06
日本銀行が2023年春、国内大手行と協力して「デジタル円」の実証実験を行うと発表しました。
いよいよ何事にも慎重で、世界から一歩後ろから攻める日本も、すり足で前に進み始めました。(笑)詳細記事は次を御覧ください。
2021年にも、同じ内容の記事が発表されていましたので↓、いかに慎重であるか驚くべきものがありますが、とにかく前に進みつつあります。
日銀が実験スタート(2021/4/6 昨年度のニュースより)
日銀は2021年4月、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)の実証実験を始めた。「デジタル円」が発行されれば、近い将来、私たちは紙幣や硬貨を使わなくなるかもしれない。くらしや経済はどう変わるのか。
日本経済新聞より
何度も仮想通貨はメディアに取り上げられてきましたが、どこの国の政府も正式な通貨としては認めないというのが基本的なスタンスでした。しかしながら、2021年はその基本姿勢が転換される年になると考えられます。しかし、一年後にエルサルバドルは、ほぼ失敗に近い状態になったようです。
世界的に大きな変化は、デジタル通貨を国の正式通貨として発行する国が出はじめたことです。
世界初、ビットコインを法定通貨に採用した「中米エルサルバドル」の狙い(昨年2021年)
中米エルサルバドルが仮想通貨(暗号資産)ビットコインを法定通貨とする法案を可決した。ビットコインが法定通貨になるのは世界初である。自国通貨を持たない国が仮想通貨を法定通貨にする可能性は以前から指摘されており、今回、とうとうそれが具現化した。
https://www.sbbit.jp/article/fj/63218
ビットコイン法定化から1年、夢破れた?エルサルバドル
エルサルバドルでは、自国通貨を発行しないとすると、原理的に通貨供給量をコントロールしたり、為替政策を実施することができないので、中央銀行を持つ必要性がなくなる。(実際には存続を継続するでしょうが)ただビットコインを法定通貨に設定した場合、国内ではドルと並んでビットコインも強制通用力を持つことになるので、店舗や企業はビットコインでの支払いを受け入れなければならない。現時点ではビットコインは価格変動が激しく、日常的な決済に使うのは難しい。現時点においては、法定通貨のうち片方は価格変動が激しい通貨ということになるので、相応の混乱が予想される。
ビットコインはマイニングという錬金システムが根本にある。同国がビットコインを法定通貨として採用する本当の理由は、ビットコインを使った外貨の大量獲得と考えられる。それはブケレ大統領が、エルサルバドル国内でビットコインのマイニングを実施する方針を示していることからもある程度、推察することができる。その他の国でも仮想通貨を国家の貨幣とする調査研究が行われている。例をあげると:
2022年9月10日の記事
中南米で最も貧しい国の1つであるエルサルバドルは、昨年9月7日に世界で初めて暗号資産(仮想通貨)のビットコインを法定通貨に採用した。ブケレ大統領が同年11月にビットコインを核とする戦略都市「ビットコインシティー」の建設計画を打ち出したが、法定通貨化から1年を経過した今、建設予定地は深いジャングルに覆われたままだ。
2021年時点で仮想通貨を検討していた代表的な国
- 2020年には中米カリブ海の小さな島国バハマと、アジアのカンボジアがデジタル通貨を発行した。
- 「デジタル人民元」はすでに実用化のフェーズに入っている。(広東省深圳市など5カ所)
- スウェーデン中央銀行は「eクローナ」の発行を準備中
- この他にも、
東カリブ中央銀行「Dキャッシュ」、トルコ中央銀行「デジタル・リラ」、ウクライナ中央銀行「eフリブナ」、マーシャル諸島共和国財務省「マーシャルソブリン」、韓国銀行「デジタル・ウォン」、レバノン中央銀行(名称未定)、タイ中央銀行(名称未定)、ウルグアイ中央銀行「eペソ」、オーストラリア準備銀行「RBAコイン」、シンガポール金融通貨庁「デジタルSGD」、カナダ中央銀行「CADコイン」など目白押し。
中米のエルサルバドルのように人口が約650万人しかない小さな国が始めたことは、近い将来、地球規模の大きなDisruptionを引き起こすのではないだろうか。
2021年からビットコインの価格が暴騰して話題になっていたが、2022年は暴落した。テスラのイーロン・マスク氏のビットコイン騒動も世論を騒がせてきた。 今年はTwitter社を買収したと思ったら、Twitter Coinという暗号資産を開発しているとの情報が流れた。 日進月歩というか、何が起こるか予想不能の暗号資産である。 現在と過去の記事を下記に掲載します。
参考記事: イーロン・マスク氏の手のひらで踊ったビットコイン
2022年12月時点でのBitCoin チャート
ブロックチェーン技術の将来のポテンシャルは無限大
仮想通貨(暗号資産)=ブロックチェーンのような理解をされていることが多いけれど、仮想通貨はブロックチェーンの一つの応用例に過ぎない。 技術的には、世界の通貨に及ぼす影響と同様の大きなインパクトを多くの分野で起こすということを理解することが大切です。
デジタル通貨の分類
ここで、主要先進国が検討しているデジタル通貨は、電子マネーや仮想通貨の欠点をおぎなうものとして開発されている。
各国が検討開発中のものはデジタル通貨の分類にあたる。デジタル通貨の価値は、法定通貨と完全に1対1で対応している。1デジタル円は、現金1円と等しい。価値はほぼ一定でビットコインのように値上がり益は狙えないが、物やサービスの価格を表示したり、代金を決済するのに向いている。PayPayやSuicaなど民間の電子マネーは払い込んだ現金を、特定の運営会社の限られた経済圏で使うことを想定している。そのため、自由に引き出したり、違う運営会社の電子マネーと交換することができない。中央銀行が発行するデジタル通貨は、どこの店でも使うことができ、誰に対しても送金できるという現金同様の利便性を目指している。
ブロックチェーンの分類
さて、ブロックチェーンは、その公開範囲によって、
1.パブリック型ブロックチェーン
2.プライベート型ブロックチェーン
3.コンソーシアム型ブロックチェーン
の3種類に分類することができる。
パブリック型ブロックチェーン
パブリック型ブロックチェーンとは、管理者が存在せず、インターネットに接続できる者であれば、誰でもノードとなり、ネットワークに参加することができるタイプのブロックチェーンのことを指す。
ここまで説明してきたブロックチェーンは、基本的には、このパブリック型ブロックチェーンのことを指しており、狭義のブロックチェーンと呼ばれることもある。パブリック型ブロックチェーンでは、ノード同士は互いに面識はなく、新たなネットワーク参加者も随時入ってくるため、ノードの分散性は非常に強くなり、その結果、高い対改ざん性を備え、悪意のある第三者からの攻撃に強いという性質を有する。
プライベート型ブロックチェーン
プライベート型ブロックチェーンは、パブリック型ブロックチェーンとは異なり、単独の管理者が存在し、ノードとしてネットワークに参加するには、管理者による許可が必要とされる。
プライベート型ブロックチェーンでは、不特定多数のノード間における合意形成の問題を考える必要がないため、迅速な合意が可能で、大量の取引を高速に処理することに適している。しかし、管理者がネットワークに参加するノードを選ぶ中央集権的なシステムであり、ノードは分散しておらず、単一障害点が発生するため、ブロックチェーンが備える重要な性質は失われている。ただし、ノードの運用者にインセンティブを提供する必要がなく、トランザクション手数料がかからない点はメリットとも捉えられる。
コンソーシアム型ブロックチェーン
コンソーシアム型ブロックチェーンとは、特定かつ複数の管理主体がブロックの生成や承認を行うブロックチェーンのことを指し、パブリック型ブロックチェーンの分散性とプライベート型ブロックチェーンの迅速性の双方を兼ね備えていることで知られている。複数の企業や団体がコンソーシアムを組む場面での取引の処理や事業管理に適しているとされており、国内外の大手企業によるブロックチェーン関連の実証実験では、コンソーシアム型ブロックチェーンが採用される場合が多い。
ブロックチェーンの主な特徴(基礎編で詳しく)
中央集権的な管理者システムが不要(自律型)
ブロックチェーンは、特定のサーバーやクライアントを持たず、「ノード」と呼ばれる分散されたコンピューター端末が対等に直接通信することで、ユーザー同士の情報共有や決済のやりとりを可能にしている。そのため、ネットワークを維持するための中央管理者が不要であり、参加者同士で直接取引ができるため、低コストな運用の実現が見込まれているだけでなく、特定の管理者による独裁的にコントロールされないメリットがある。
改ざんが極めて困難
ブロックチェーンのもう一つの大きな特徴は「改ざんが実質不可能」であること。証券や不動産取引、ローンのような契約が複雑化しやすく第三者機関による審査や照合が必要な領域において大きなメリットとなる。
ゼロダウンタイム!!
もう一つの大きな特徴として、「ゼロダウンタイム」がある。システムやサービスが停止している時間が「ゼロ」であることを指す。従来の中央集権型システムではダウンタイムは避けられない。
今年発生した大規模障害:みずほ銀行システム障害、ATM4300台停止(2021年2~3月にかけて発生したシステム障害) 藤原弘治頭取(59)が、システム障害の続発を受け引責辞任
ことしすでに5回発生 1回目はATMの80%が利用不能に(20218/20)
従来の中央集権型のネットワークの場合、そのネットワークの管理者になんらかのトラブルが発生すれば、システム全体が影響を受ける。しかし、ブロックチェーンの場合、上記のような一カ所が動かないとシステム全体が障害となるような「単一障害点」が存在せず、ゼロダウンタイムを実現している。2009年に運用が開始されて以降、ビットコインのネットワークが停止したことは現在までに一度もない。
ブロックチェーンの問題点
ブロックチェーンはメリットも多いが、当然のことながら、いくつかの問題を抱えている。
スケーラビリティの問題
一つ目に、「スケーラビリティ」の問題が挙げられる。ここで言う「スケーラビリティ」とは、トランザクションの処理量の拡張性のことを指す。ブロックチェーン技術では、採用するコンセンサスアルゴリズムや参加するノードの数によっては、合意形成に時間を必要とするため、想定する業務の運用に必要な処理速度を確保することができない場合がある。
例えば、ビットコインのブロックチェーンの場合、ブロックサイズが1MBに制限されており、ブロック生成間隔が約10分とされているため、一定時間に処理できるトランザクション数は限定されることになる。そのため、多くのトランザクションが同時に集中すると、リアルタイムの処理が不可能となり、処理速度が低下してしまう可能性がある。
ファイナリティの問題
二つ目に、「ファイナリティ」の問題が挙げられる。ファイナリティとは、簡単に言えば、決済が完了した状態のことを指す。日本銀行(Bank of Japan)は、「受け取った金額が後になって紙くずになったり消えてしまったりしない」「決済方法について、行われた決済が後から絶対に取り消されない」の2点を満たす決済をファイナリティのある決済と定義している。
ビットコインのブロックチェーンで採用されているコンセンサスアルゴリズムであるPoWの場合、合意形成に際して、チェーンの分岐が発生する可能性があるため、取引内容が覆る可能性を完全にゼロとすることができず、ファイナリティを確保することができない。
特に、金融機関にとっては、ファイナリティは必要不可欠な概念であるため、上記の点を踏まえ、プライベート型ブロックチェーンやコンソーシアム型ブロックチェーンを好んで採用する場合が少なくない。
データの秘匿性確保の問題
三つ目に、「データの秘匿性確保」の問題が挙げられる。ブロックチェーン技術の特徴である複数の参加者間で同一の情報を共有するという性質は、参加者間での情報共有を前提とする取引の場合はメリットとなり得るが、情報共有を前提としない取引の場合は、デメリットとなり得る。取引データを暗号化することによって、情報の閲覧を制限することも技術的には可能だが、暗号化された情報は参加者間で共有されるため、暗号が解読されるリスクが増加する点には注意が必要である。
NFT(ブロックチェーンの応用技術)
最近話題になっているNFTについて簡単に説明します。NFTは「Non-Fungible Token」の略で、「代替不可能なトークン」と訳されます。
まず、ニュース記事を御覧ください。
要約すると、
NFTは、暗号資産と同じように、透明で安全なデジタル台帳であるブロックチェーンによってデジタルアイテムを認証する。これによりブロックチェーンはデジタルアイテムの唯一無二の独自性を検証することができる。ゲームの場合、プレイヤーは単なるゲーム内アイテムではなく、唯一無二のゲーム内アイテムを獲得・購入し、さらに販売することができるようになる。
NFTはアート、スポーツのコレクターズアイテム、音楽などのアプリケーション で爆発的に売れた。 NBA Top Shotの売上は7億ドルを突破しているし、アーティストのBeepleによるNFTデジタルコラージュは、クリスティーズで6,930万ドルで落札された。ゲーム業界では、Animoca BrandsやForteなどが、ユニコーン(評価額10億ドルの新興企業)の仲間入りを果たしている。
NFTは現在、週に2億1300万ドルのペースで売られている。
NFTと「資産」
従来のデジタル空間では、情報(メール・画像・プログラム等)は複製することが容易であり、それこそが価値であるため希少性による付加価値はつけにくいという性質がありました。一方NFTはブロックチェーン上で唯一無二であることが保証されていることが大きな特長です。デジタル空間において唯一性のある資産として保有し、取引を行なうなどの運用方法が数多く見出されつつある
アート分野
アート(例えば、絵画)は資産として投資対象になってきた長い歴史があります。アートが資産価値を認められ、展示会を催せるのも、そのアートの真贋が証明され唯一性があるからこそ成り立つからに他なりません。ところがデジタル空間においては複製が容易であるためその証明が困難で、これまではアートの取引や展示が成立しにくかったのです。
NFTを用いれば、デジタル空間にあるアートについてもブロックチェーン上で唯一性を証明することができます。過去の取引履歴や発行母体について誰でもそれが本物であると確認できるのです。この仕組みを使って、デジタル空間でも数多くのアートを展示し、多くの人がそれを安心して楽しめるようになりました。
トレーディングカード分野
トレーディングカードも従来からその資産性に加え、ゲーム性やコレクション性が高いために、多くの人に楽しまれてきました。デジタル空間上で楽しんだり交換を行うためには、簡単に複製されてしまうことや所有権を証明できないことが課題となっていましたが、NFTを採用することでこれらを解決することができました。
現在では数多くのトレーディングカードが、NFTによって真贋や所有権を証明できる状態で「デジタルトレカ」として発行され、取引されています。
日本でも2020年10月に人気アイドルグループ「SKE48」の大型ライブの取りおろし画像をデジタルトレカに載せて「NFTトレカ」として販売され、即完売となるなど人気を博し、大きな話題となりました。
IOTとブロックチェーン
IoTセキュリティに対するニーズの高まり
IoTデバイスの普及は、スマートシティプロジェクト、スマートトランスポーテーション、車両接続、スマートグリッド、スマートホームなど、いくつかのアプリケーションで見ることができます。しかし、接続性の向上に伴い、IoTデバイスは、分散型サービス拒否(DDoS)攻撃、ボットネット攻撃、安全でないエコシステムインターフェースなど、セキュリティ上の脆弱性を伴うことが多くなっています。安全性の低いIoTデバイスは、セキュリティシステムを悪用した、サイバー攻撃のアクセスを容易にします。
IoTのセキュリティ懸念
さまざまなIoTデバイスへの攻撃はもとより、IP監視カメラが侵害されIoTボットの一部となり、DDoS (分散型サービス拒否, distributed denial-of-service) 攻撃に加担するなど、IoTの世界におけるサイバー攻撃は、ますます大きな問題となってきています。インターネットに接続する膨大なデバイス、およびこれらのデバイスがつながるIoTのエコシステム全体の安全性に関する懸念は既に周知の事実であり、IoTのセキュリティ懸念を解消できる実効性のあるソリューションが求められています。
ブロックチェーンソリューションは、IoTデバイスの分散型ネットワークを構築することで、デバイス通信を処理するための中央拠点が不要になります。ブロックチェーンは、データの改ざんやIoTデバイスへの不正アクセスに対する強力な保護機能を備えつつ、IoTセキュリティの魅力的なソリューションを提供します。ブロックチェーンを利用してIoTデータを保存することで、セキュリティの強化、暗号化、透明性の確保が可能となり、許可された人だけがIoTネットワークにアクセスできるようになります。したがって、IoT対応センサーを使用している企業は、IoT資産のセキュリティを強化するために、ブロックチェーン技術への依存度を高めています。
ブロックチェーンIoTの市場
ブロックチェーンIoTの市場規模は、2020年の2億5800万米ドルからCAGR45.1%で成長し、2026年には24億900万米ドルに達すると予測されています。IoTセキュリティへのニーズの高まり、透明性と不変性に支えられたプロセスの簡素化、スマートコントラクトやAIを用いたブロックチェーンベースのIoTソリューションの高い導入率が、ブロックチェーンIoT市場の需要を世界的に急増させると予想されます。
IoTとブロックチェーンを組み合わせる意義
IoTが普及し、高度なサービスが登場するにつれて課題となると予想されるのが、従来のクライアント・サーバ型の中央集権型ITシステムの技術的弱点です。大量のIoT端末から膨大なデータが送信されてトラフィックが増加すると、通信回線やサーバに多くの負荷がかかります。そうなれば多くのIoTシステムにとって重要なリアルタイム性が損なわれ、場合によっては障害によって通信の継続性が失われるリスクが生じます。
また、IoTのような中央集権型のITシステムはシステムが複雑化するほど管理が難しくなり、コストもかかる傾向があります。さらにサイバー攻撃などに対しては、中央にきわめて堅牢なセキュリティ対策を講じる必要があります。
それに対し、分散型システムであるブロックチェーンはトラフィックが集中しないため負荷を軽減でき、たとえ一部でトラブルが起きても簡単にはサービスが停止しない耐障害性を備えています。また、中央にサーバが存在するわけではないのでサーバの構築や設定といった作業が不要で、IoT端末などの管理もネットワークの参加者がそれぞれで行えばよいという状況を作れます。セキュリティにおいても、ブロックチェーンは参加者が分散してデータを保持しているため攻撃リスクを軽減することが可能とされています。IoTとの組み合わせにおいては、データを暗号化と分散管理によってデータの改ざんが困難になること、透明性が高いことがとくに注目されています。
もちろん、ブロックチェーンに全く欠点がないというわけではありません。万一、システム内に何らかのバグが生じると、すべてのブロックを修正するのは難しく、システム全体に致命的な影響が及ぶリスクがあります。また、データチェックも中央集権型システムであれば集中的に行なえますが、ブロックチェーンではブロックごとに行う必要があり、メンテナンスに時間がかかります。
それでも高い拡張性、相互運用性、耐障害性といった要件が求められるIoTシステムにとって、ノード分散による可用性の高さ、導入コストの安さといったブロックチェーンの特徴は非常に魅力的です。しかも、IoTとブロックチェーンを組み合わせると参加者間で台帳を共有することになるのでデータ形式やアクセス方式が標準化され、契約の条件確認や履行を自動化するスマートコントラクトの共有によってルールの統一化が図られるというメリットも得られます。
ブロックチェーンをサプライチェーンに応用
ブロックチェーンは様々な分野に利用できる大きなポテンシャルを持っています。(ブロックチェーンの基礎編参照)
IBMとMaerskが、ブロックチェーンを利用したグローバル取引(例)
Maersk(MAERSKb.CO)とIBM(NYSE:IBM)は本日、合弁会社を設立し、ブロックチェーン技術を利用した国際貿易を遂行するため、より効率的で安全な方法を提供する計画であることを発表。(以下要約)
世界の貿易エコシステムにおいて、そのコストと規模は、ますます複雑さを増しています。毎年、4兆ドルを超える商品が出荷され、消費者が日常的に利用する商品の80%以上が海運業により輸送されています。このように多くの商品を処理し、管理するために必要な貿易用書類のコストは、実際の物理的な輸送コストの最大5分の1に達すると見積もられています。世界経済フォーラムによると、国際的なサプライ・チェーン内の障壁を削減することにより、世界の貿易量を約15%増やせる可能性があり、経済の活性化や雇用の創出につながるとされています。
ブロックチェーン技術の特性は、異種のパートナーによる大規模なネットワークに最適です。分散型台帳技術であるブロックチェーンは、ネットワーク内で実行されるトランザクションすべてを、改ざん不可能な共有の記録として確立し、権限を持つ関係者が信頼性のあるデータにリアルタイムでアクセスできるようにします。国際貿易のプロセスをデジタル化するテクノロジーを適用することにより、新しい形式の指図や承認を情報のフローに導入することが可能になり、多数の貿易パートナーが、詳細情報やプライバシー、機密性を損なうことなく、トランザクションを共有する単一のビューを協力して確立できるようになります。
説明動画
このように様々な分野へのブロックチェーンの応用と実用化が進んでいくと見られています。
政府と公的記録 (公文書の改ざん問題)
ブロックチェーンの技術は日本政府の役人の特技である改ざんにも応用が可能。(以下ニュースより)
財務省で決裁文書が改ざんされた問題が発覚して以降、公文書をどのように管理・保存していくかについて議論が活発になっています。
ブロックチェーン上で公文書を管理する案も浮上している。改ざんが極めて難しいとされるブロックチェーンを使えば、いったん決裁された文書を書き換えても、すぐにばれる。
ブロックチェーンは文書を修正した履歴が残せる
2018年7月20日、政府が公文書改ざんの再発防止策をまとめた。報道によれば、内閣府の独立公文書管理監が、各府省が公文書をどのように取り扱っているかを監視する役割を担うという。
文書の作成から保存、廃棄、国立公文書館に保管する一連のプロセスを電子化するシステムの構築も進めている。
翌21日の日経新聞は、「公文書はすべてを残す覚悟で取り組め」と、なかなか語気の鋭い社説を掲載した。
公文書を全部残して、電子システムに載せる。システムにはブロックチェーンを使う。こうすれば、一連の問題のような不正は極めて起きにくい。文書を修正した履歴も残す場合、ブロックチェーンは適性が高そうだ。
実験段階ではあるが、公文書管理にブロックチェーンを使ってみる取り組みも続々と登場している。
ところが、公文書に登録されないように、役所側は個人のメモと行政文書をうまく使い分けて追跡をのがれてしまう。これは技術の問題ではなく人の問題だ。これがなければブロックチェーンは公文書偽造問題を根絶するきっかけになるだろう。
いずれにしても、将来は公文書の記録にブロックチェーンが利用されることは、間違いないだろう。
ブロックチェーンとシェアリングエコノミー
内閣府の経済社会総合研究所の報告※1 によれば、日本における2016年のシェアリング・エコノミーの生産額は5,000億円規模と試算されており、国内労働人口の減少、働き方の多様化、価値観の多様化を背景に、今後もシェアリング・エコノミー市場が拡大することが見込まれています。シェアリング・エコノミーにおいては、住宅、オフィス、店舗、街中などで「スペース」「移動手段」「モノ」の共有が進み、さまざまなシーンで資産共有のツール・技術として、IoTおよびスマートロックの活用ニーズが拡大していくと考えられます。
ブロックチェーンは、このシェアリングエコノミーと呼ばれる新たなビジネス分野でも役割を果たす可能性がある。急速に伸びつつあるこのビジネスモデルは個人間での商品やサービスの入手や提供、共有利用と定義されており、コミュニティーベースのオンラインプラットフォーム上で実現されている場合が多い。
シェアリングエコノミーに基づくサービスを提供している有名企業の例として、空いている部屋やアパート、家の所有者と、間借り人や旅行者を結びつけるプラットフォームを用いて短期滞在先を提供するAirbnbや、モバイルアプリを用いることで、タクシー会社に所属していない最寄りのドライバーとやり取りできる輸送サービスを提供しているUberが挙げられる。
Blockchain Councilは「これにより、ブロックチェーンを実装したソフトウェアは、巨額の収益をもたらすプラットフォームを稼働させるための大規模データセンターに依存しなくても済むようになる。そして既に、分散化と、ユーザーに対するより公平な報酬という原則に基づいて動作する『Steemit』のようなブロックチェーンベースのプラットフォームが登場している」と述べている。
金融サービスの技術「フィンテック」の中核技術(文献)
金融と IT テクノロジーを融 合させた 新しい 潮流「フィンテック」。そのなかでも 、 ビットコインなど仮 想 通貨の中 核 技 術 で ある 「ブロックチェーン」テクノロジーは 、 強 力な改ざん防止機能を備えていることから、 さまざまな業界から注目されてい ます。仮想 通貨 だけではなく、重要な情 報 の管 理などにも幅広く応用しようという動きが広がっています。
IT 業 界のスタートアップ が 牽 引 するフィン テック
金融 業界に 、大きな IT 変革の波 が押し寄せています 。それ が 「 フィンテック」と呼ばれ るものです。 フィンテックとは金 融( Finance )と技術 (Technology ) を組み合わ せた造 語で 、IT を用いた新しい金融 サービスを指します。 以前コムウェ アプラスでも、「金 融 革命 の主 役に躍り出た 『フィンテック』」として取り上げました。
具体 的には、「スマートフォンで銀 行 口座の 管理」「スマートフォンで 家 計 簿」 といった個 人が 利用する身近なサ ービスをは じめ 、「クラウドを使った会計システム」「モバイル決済送 金 サービス」「人 工 知 能(AI)を駆 使した資産 運用( 投資 支 援)」、 そして「仮想 通 貨」 など、さまざまなサービスが次々に実 用化されています 。
以下、詳細はPDFをダウンロードください。