IOT over 5Gの要点
最近では、メディアがDXを大々的に取り上げている為、少し、影に隠れがちなIOTのプレゼンを行ないました。 IOTは、ハイプカーブのピークは5年前に過ぎてしまって、今では各社が具体的に売上競争に突入し始めた状況と見られます。
しかしながら、5Gについては、まだ立ち上がったばかりなので、今後は5Gを含んだIOTが急速に広まっていくと思われます。
(1) IOTビジネスの現状
IOTがメディアで話題になってすでに数年が経過して、デバイスも相当数安価で市場に出回ってきました。また、IOTのPlatformerも様々なサービスを充実させてきており、これからは市場も活性化し急拡大するフェーズにはいっております。
Hype Cycle(下図)でいうと、メディアの過剰反応期のピークを過ぎてPOCも終わり、いよいよ実需での拡大期に入ったと思われます。
先月、IT展示会でもIOT&5Gというタイトルで大きなテーマとして取り上げられていましたが、デバイスとクラウドを結ぶ通信線路の部分の5G化が最後の仕上げ部分として残っている状態にあります。
5GがIOTに組み込まれると、大容量化が可能となり、IOTの中で伝送されるデータの中でも、監視カメラなどの映像伝送が可能となり、IOTの応用分野が飛躍的に広がります。いわゆるLocal 5Gもこのカテゴリーに入りますので、LPWAを使用したIOTネットワークで既に実績を持つ会社が、Local 5Gでの早期参入にも強みを発揮する可能性があります。
次のセクションで述べるLocal 5Gは、この観点からも早期に準備作業をすることが必要と思われます。
(2) 宇宙IOT(これは、ちょこっと参考のみです)
IOTの未来の研究課題は既に、初期段階のものは終わり、ソフトバンクのHAPSや衛星移動体通信で、宇宙空間も含めIOT化するというのがトレンドの方向になっております。 (下図参照) HAPSは、ソフトバンクが参画して実用化寸前になっているようです。(航空法などの対応や法律的整備がまだ出来ていないので、しばらく時間はかかると
(3) デバイス/Platform側の進歩
地上レベルでのIOTについては、既にIOT PlatformerであるSORACOMは、グローバルにIOTネットワークを構築するサポートができるようになっております。
また、デバイスの開発も急拡大しており、あらゆる種類のデバイスが廉価で入手可能となりつつあります。
下図は、IOTデバイスマップで330個もの多くのデバイスが既に市場にでまわるようになりました。 だいたいなんでもあるっていう感じですね。
(4)IOTソリューションビジネス
デバイス、プラットフォーム、通信路、クラウド、アプリなど殆どのコンポーネントが専業業者から入手できる状態になってきているので、顧客を開拓しソリューションを考案することができると、IOTビジネスを開始することができる素地(platform)がマーケットにできていると思います。
これらのデバイスコンポーネント、ネットワークサービス、アプリなどを組み合わせて顧客にソリューションを提供するのが今後のICTビジネスの本流、つまりDX solutionとなります。
(5)総務省がIOT検定制度を発足
ワイヤレスIoTプランナー検定は、ユーザー企業等においてワイヤレスを活用したIoTシステムの利活用を目指す方々に、IoTの入門から実務応用までの基礎知識を習得していただくために設けた検定資格制度です。
総務省後援ワイヤレスIoTプランナー検定
過去の月報で、ドローンの資格制度が近年始まることも述べましたが、このIOT検定などは、JTE社員の資格としてモーティベーションを上げると同時に将来の実務で役に立つ可能性があります。
- IoTの入門から実務応用までの基礎知識を習得
- ワイヤレス: 5G&ローカル5GやWiFi、LPWA、さらに近距離通信のBluetoothからICカードに至るまでそれぞれの概要、活用方法と特質
- DX: 企業のDX中核リーダーのためのIoT
過去の月報で、ドローンの資格制度が近年始まることも述べましたが、このIOT検定などは、JTE社員の資格としてモーティベーションを上げると同時に将来の実務で役に立つ可能性があります。
Local 5G の可能性研究
(1)Local 5G 予想外の早期進展?
NS solutionsのLocal 5G solutionについて(下の写真)、最近のメディアの報告例などを見ますと、予想外にLocal5Gの市場が早く始まるのではないかと感じております。
今年の前半においては、IDCなどのレポート(下図)では、まだ5Gに対して市場は冷ややかに静観している経営者が多いとの見解でした。特に、技術的に5Gをよく理解している人ほど、SAの導入時期がまだ来年以降であるとかの理由で、静観とのことでした。(下図参照)
しかしながら、情勢に変化が起きている可能性があります。
(2)菅政権のデジタル化戦略の影響
本年9月の菅政権の誕生とともに、一気にデジタル化の風潮が高まってきたことが、きっかけとなって、DXで重要な位置づけのLocal5Gの注目度は増大しているようであります。
総務省は、H30にDXレポートで 「2025年の崖」 と銘打って警鐘を鳴らしたけれど、実際には、日本では全くDX化は進展しませんでした。(昔ながらのSIer) しかし、今回はどうも変化が起きそうな予感がしています。
- (3)ハイプ・サイクルのPeak現象の修正が始まる
ちょっとテクニカルな話になりますが、現在5Gはハイプ・サイクルのPeakあたりと考えられます。
ハイプ・サイクルの定義の2→3段階で、妄想的なソリューションから、現実的なソリューションに移行していきます。 5つの段階を見てみると。
- 黎明期(技術の引き金、Innovation Trigger)
2. 流行期(過剰期待の頂、Peak of Inflated Expectations)
次の段階では、世間の注目が大きくなり、過度の興奮と非現実的な期待が生じることが多い。成功事例が出ることもあるが、多くは失敗に終わる。
3.幻滅期(幻滅のくぼ地、Trough of Disillusionment)
技術は過度な期待に応えられず急速に注目度がさがる。一方、現実から誇張(ハイプ)を切り離すことにより、より現実的な事例が発生し始める。
4.回復期(啓蒙の坂、Slope of Enlightenment)
5. 安定期(生産性の台地、Plateau of Productivity)
Key Point: 市場関係者の誤算
未来の市場(5G Dream)に注目しすぎて初期の現実市場を見落としていないか?
通常、POCは遠未来の夢を目標に行われ、メディアもそれを好みます。
- 遠隔医療
- 自動運転
- AIを装備したSmart Factory
- Smart City
- Smart Agri
などなど
これらは、将来実現化されることは間違い有りませんが、1-2年の間に、中小企業が実装するようなものではないでしょう。 この内容だけを見ていると、すぐに5G市場が立ち上がるとは思えないので、皆さん静観という判断になって当然です。
NS SolutionsのPOC内容の要点を箇条書きにします。(費用は2020年時点なのであくまで参考まで、将来は劇的に下がると予想しています)
- グループ会社(新日鉄)工場でのPOC(室蘭工場)を行った。
- Nokiaの端末が150万円の仕入れで、250万円の売価。
- ソフトウェア関連500万円-1000万円(たぶんSI開発も自社)
- サーバーその他工事などすべて自社でまかない
- 工事は、契約している工事会社か、客先の契約工事会社を使用
- サービスは映像監視カメラ+ 監視用データ通信 のシンプルなもの
もう少し一般的に表現すると、初期市場のlocal 5Gは、LPWAなどを使い、既に需要が明確になっているIOTに5Gを追加して、高速伝送のメリットを加えたレベルの簡単なもの。
おそらくこれが最初に市場では立ち上がるのではないでしょうか?
特に、映像監視は急激に伸びると予測され、場合によってはこれだけでもLocal 5Gがあれば、メリットが十分なシステムになるでしょう。 これに、もう一つ、工場内での有線LANの5G無線化を加えると、十分なメリットが出てくると思われます。
極端なことを言うと、かなりのケースで現在の4GLTEで伝送容量も間に合うし、低遅延もそれほど問題にならない市場が大部分かもしれません。
5Gはどうしても技術屋の視点で語られることが多く、一般ユーザーの市場ニーズがどこにあるか、時系列のなかで厳密に把握されていないように見られます。
2025年度の崖問題に対するデジタルソルーションへの目覚めが低いのが、大本の問題として存在するのですが、「もし菅政権のデジタル化が功を奏する」 と、IOTも5Gも、そしてAIも急激に市場で立ち上がる可能性があります。(2021-2022年度あたり)
日本人の特性からすると、隣近所、横並び意識なので、なにかのきっかけでLocal5Gブームが起こる可能性は高いと推測されます。
(4) シンプルなSolutionで十分な価値がある
ビジネスは、時間軸を考慮し、リアルな市場を把握して、それにターゲットを当てたソリューションを提供することなので、もし次の仮説が正しければ、それに沿った事業計画と事前の準備を少し始めてもいいかも知れません。
(仮説)
初期市場では、様々なIOT/Local 5GSolutionの内、
シンプル5Gソリューションの内容は、
提供するサービス
基本的にシンプルサービスに限定する:
- 既にある有線LAN、その他WiFiを5G高速LANに置き換え
- 今までできなかった、映像監視カメラを新規追加
- データシステムは、今までのものをそのまま大容量化、シンプル化、広域化する
- アプリもまずは、今までどおりでスタートアップし、将来5Gのメリットを生かしたシステムにアップグレード
構成するシステムコンポーネント
- 5G基地局+コア(software)
- アンテナ
- 監視カメラ
- PC
- 工材
- アプリ(既存と同じでStart up)
以下、まとめると
- Local5Gの価値は
- 工場内のLANの効率化に(コストが下がることが条件)使える
- 映像監視の需要に答えられる
- 遠隔地を無線で素早くネットワーク化できる。
- 5G保守整備がもっと簡単になる必要がある。
(5)Local 5Gは採算性が解決できないと成り立たない
5Gの応用範囲は、すべての産業(工業、農業、医療、….)にありますが、どれをとっても、1件1件が、カスタムメードの手作りに近いものとなり、客先との仕様固めに非常に大きな工数と時間がかかるので、ビジネスとして成り立ちにくいと思われます。(採算がとれない)
病院とか、駅、スタジアム、港湾、空港なんかのソリューションはNTT,
NECや富士通さんのような、余裕の大企業と、資金力のある顧客のコンビしかやれないですよね。
中小企業にとっては、 小規模で、かつ同じパターンでたくさん仕事を受けられて実行できるビジネスが狙い目ではないでしょうか。 日本には工場は数多くあって、その中でも有線LANケーブルを5G無線に置き換える需要は非常に多いと推測されます。(有線は、配置換えなどで多くの時間とコストがかかっていた) それと映像伝送の需要が急拡大しているので、通常のデータ伝送に加えてこの2つをメインとすれば、技術ノウハウは非常に少なくて、システム構成も一律で済むでしょう。
顧客側としても、安くて早くて簡単であればハッピーでしょう。(というか、それでないと買ってくれない)
実は、IOTは5年早く市場に広まり始めており、実際の内容を見てみると上記の、安い、早い、簡単で便利なものが一気に広まっています。
Local5Gには無線局の許可申請など、めんどうな作業もありますので、 とにかく、いかに簡単化と標準化できるか、相当工夫をしないとビジネスとしては成り立たないと思います。