巨大プラットフォーマーの時代
今日、Google, Amazon, Microsoftなどの巨大企業は、数多くのプラットフォームを格安で提供しています。一般個人でも、自分のウェブサイトにgoogle mapを無料で埋め込んで表示させたり、自分のアプリと連携させて自由に新しいサービスを作ったりすることができる時代です。 実際、Google earthの精度の高い pro版も、近年無料化されHD画像で出力できるので、不動産会社などが商用として使えるようになっています。
AIのような高度な技術分野でも基本的にサービスはプラットフォーム化されているので、ユーザーとしてはAPIを通して比較的簡単に使うことができます。これは何を意味しているかというと、AIの専門家を大勢かかえていなくてもAIサービスを始められるということです。
「世界的に成功している有名なDisruptorのUberは上場時の時価総額は約7兆円との報道でした。 調査会社の報告によると、Uberで利用されるアプリの開発期間は4か月程度で、開発に要したコストは4百万円くらいとのこと(ネット記事より)。 これは、自社で開発者を抱えて自前で作らなくても、アイデアがよければ、すでにGAFA等が安く提供しているプラットフォームを利用してビジネスを構築できることを示しています。
プラットフォーム
上記で述べたプラットフォームの活用を行うにあたり、実際2021年現在のマーケットの状況はどうなのかを説明いたします。最初に(1)プラットフォームサービスに付いて説明し、その後、(2)プラットフォーム戦略の説明をいたします。両者は意味が異なりますのでご注意ください。
一般にプラットフォーム(platform)とは、サービスやシステム、ソフトウェアを提供・カスタマイズ・運営するために必要な標準環境を指し、パソコンでは、WindowsやMac OS、UNIX、LINUXといったOS(オペレーションシステム)をいいますが、一般企業の業務をアシストするプラットフォームは、もっと上のレイヤーの「主にクラウド上のアプリケーションサービス(略してクラウドサービス)」をいいます。それぞれのレイヤーの関係図を下記にしまします。
一昔前では、SIerと呼ばれる開発を伴うサービスが主流であったのですが、今日では開発エンジニアなしで、ソリューションを構成しクライアントに提供できる時代がやってきたわけです。
我々が注目すべきは、PaaS(Platform as a Service), SaaS(Software as a Service)のエリアで、クライアントに対して、ソリューションを提供するに当たり、安く便利に使えるツール群と考えればよいと思います。特に、我々はSaaSのように、より上位のレイヤーを利用することが重要です。理由は明確でDXソリューションのコアはITテクノロジーではなく、クライアントのビジネス問題の解決策、アイデアがキーとなるので、プラットフォームの選択はいかに安く便利で使い勝手がよいかどうかということなのです。我々が必要なIT知見(技術知識)は、上記の目的に合った最適なプラットフォームサービス(主にクラウドで提供されるのでクラウドサービスと呼びます)はなにかを見極めることです。
上図のPaaSにあたるところの代表的なサービスを列挙すると
AWS(Amazon Web Service)、Microsoft Azure、Google App Engine (GCP)、FUJITSU Cloud Service、Alibaba Cloud、IBM Cloud (IBM)、App Cloud(Salesforce)、Oracle Cloud Platformなど多数が存在します。
テクニカルな言葉の定義では、PaaSがプラットフォームとなりますが、我々がここでプラットフォームといっているのは、SaaSでアプリケーションレベルのクラウドサービスを指しています。下図に、全体の関係がイメージでわかる図を示します。
オンプレミス(自社内にサーバーなどを設置)すると、そのメンテナンスに多くの費用と時間がかかります。一昔前は、それが当たり前であったのですが、現在ではどう考えても、クラウドのアプリケーションサービスを使ったほうが、(コストの面、メンテナスなど)がいいわけです。にもかかわらず、まだオンプレミスが残り続けているのは、
- マインドセットの転換ができない(昔の開発志向から抜け出せない)
- 実動システムを切り替えする手間(技術含む)とコストが大きすぎる
- 知見がない(知らない)
ということです。
クラウドサービス(SaaS)
クラウドサービスの市場規模も年々拡大しており、そのジャンル(分野)もグループウェア、勤怠管理システム、クラウド会計システムなど、ありとあらゆる分野に拡大しつつあります。
大企業やIT志向の高いベンチャーではクラウドサービスの導入が進んでおり、あらゆる業務の効率化やコストカット、売上向上に成功していますが、知見の少ない中小企業では、クラウドサービスを導入するメリット・デメリットがわからない為、遅れていることも事実です。
クラウドサービスのメリット
ユーザーのメリット
1、スピーディーに導入できる
アカウントを取得するだけで使用できるのでソフトウェアのインストールなど手間をかけることなく導入することができる。
2、安いコストから使い始めることができる
多くは、使用する分だけ料金を支払う方式で毎月料金を支払う月額制なので無駄なコストがない
3、デバイスの種類を選ばない
クラウド上で展開されているので場所と時間を選ばずに様々なデバイスから利用できる。
4、ソフトウェアの管理が要らない
バージョンアップなどをベンダーが対応するため、管理は不要。
5、一定の無料試用期間がある
無料トライアルなど、一定期間サービスを利用できるサービスが多いので、導入前に実際の使用感なども確認できる。
代表的なクラウドサービス
グループウェア(スケジュール管理、タスク管理、会議室予約、文書管理、チャットなど)
- サイボウズOffice
- Kintone
- Google Workspace
- Garoonk
- Microsoft teams
,など 数十社より提供されている。
バックオフィス(経理、人事、総務、情報システム、ERP)
- Gallipot NX-Ⅰ
- ZAC
- NetSuite
- GEN
- ALL-IN
- SAP Business One
- ジョブカン勤怠管理
- KING OF TIME
- TeamSpirit
- ICタイムリコーダー
機能で分類(まとめ)
- 社内SNS
- バックオフィス(経理・人事・総務・情報システム)
- 勤怠管理システム
- オンラインストレージ
- メール配信システム
- ERP(基幹システム)
- マーケティングオートメーション(MA)
- BI(ビジネスインテリジェンス)
- SFA(営業管理システム)
- CRM(顧客管理システム)
- 名刺管理ツール
- 人材管理・タレントマネジメント
- 採用管理
- オンライン学習(e-learning)
- テレビ会議・ウェブ会議
- プロジェクト管理・工数管理
- 在庫・生産管理
- 文書管理・EDI
- ネットワークセキュリティー
- ウイルス対策
- ECサイト運営
専門的なプラットフォーム例
以前にもレポートしましたが、DXサービスに応用できるサービス
IOTプラットフォーム
重要な3つの機能
- データ収集
- データ保管(データレイク)
- アプリケーション
IOTに関しては、無数のベンダーとサービスプラットフォームが存在し、増加し続けているので、すべてを把握することは不可能でしょう。そのメチャクチャな乱戦イメージがわかる図がありましたので、見てください。グローバルですが。(笑)
実用的なレベル
IOTの項目で、SORACOMの例を紹介しましたが、ほぼすべての大手IT企業がなんらかの形でIOTプラットフォームを提供しています。ただ、トータルでコストが安い、使いやすい、など総合的に見るとベンダーは限られてくるのではないかと考えています。実際には、そういった純粋な基準ではなく、ベンダーとの取引関係などいろいろなことが加味されて、高額であっても採用されているベンダーはたくさんあるということです。(たまたま最初にコンタクトして企業であるとか。。。。)
プラットフォームの選定にあたって、いくつかのキーポイントがあります。
1 セキュリティ面での安全性
IoTとは、その言葉の中に含まれるようにインターネットへの接続が前提となります。インターネットへの接続がある限り、セキュリティ面での安全性は最も重要視しなければならない項目です。
大規模な事業モデルにおけるIoTプラットフォームに脆弱性があり、サイバー攻撃を受けたとしたら、情報漏えいが起きる可能性があります。こういった点を考えると、現場側でデータの処理を行うIoTエッジプラットフォームはセキュリティリスクが低いといえるでしょう。
2. 接続の安定性とスピード
データの送受信によって成り立つシステムが運用されている限り、ネットワーク接続の安定性は重要な項目です。また、処理されたデータによって制御される設備の精度を上げるためには、データ送受信のスピード、タイムラグの少なさも重要となります。こういった点でも、エッジコンピューティングを導入したIoTエッジプラットフォームが有利といえます。
3 デバイスの拡張性
もう1つは、生産設備の増設や稼働拡大などによるIoTデバイスの増加があった場合、IoTプラットフォームもそれに合わせた拡張性があるかどうかは重要です。システムの性質にもよりますが、数量規模が一桁増えても大丈夫かどうかなどの拡張性は最初に検証スべき項目です。この点に関しては、データをクラウドで一括処理するIoTクラウドプラットフォームが有利です。1,000台を超えるような数のデバイス拡張に対してエッジで対応するとなると、大きなコストがかかることになります。
AIプラットフォーム
次に、最近発展が華やかなAIのプラットフォームについて解説いたします。
まずAIの分野というのは、統計数理学的な分野で、明らかにSIerが扱ってきた(プログラミング)分野とはずいぶん異なるということです。私もその分野は一度もやったことがない世界です。AIのベンチャーに在籍したときに1週間のAI集中講義をうけて、その違いがやっとわかったと言う次第です。なかなかイメージがつきにくいのですが、新規事業を始めるという観点から解釈すると、「今まで30年SIerをやってきたので、うちの会社の数名をそっちに振り向けてAI事業も追加すればいい」とはならないということです。
まず、この誤解をしないことが、重要です。実は、同じことが、DXにもあてはまるのですが、DXについては、このシリーズで解説を続けているところです。
もう一つ例を上げると、Disruptorとして近年大きく浮上してきているドローンを考えてもらえればわかります。ドローンの場合だと、少し理解しやすいでしょう。目で見てすぐに分かるからです。ドローンを制御する部分はソフトウェアプログラムです。プログラムであるからといってSIerの経営者が直ぐに、「うちでも出来る」とは思わないでしょう。ドローンは基本技術が航空工学でSIerとは異質の分野だと理解できるからです。
近年AI分野に大企業はほとんど参入してきていますが、早い段階でこの違いに気がついて軌道修正を行い、AI事業を初めているわけです。では、どうしているかというと、AIのコア部分については、全く異質の統計数理学専門家・データサイエンティストを高額の給料で雇って開発し、それをソリューションとして使えるようにするところは今までのプログラマーが担当するというやり方になっているわけです。
人材の引き抜き合戦が繰り広げられているそうで、雇えても定着率が低くきわめて難しいリクルートの世界のようです。なので、Google のような巨大資本で湯水のようにお金が使える企業に技術が集中しているわけです。
では、AIは一般の会社では手の届かないものなのかというとそうではありません。
GAFAは、基本的な考え方が、プラットフォームビジネス(別項目で説明)なので、開発するAIコア部分をプラットフォームとして、一般の企業(AIの中身を知らない)に使えるように開放しているからです。(下図を参照)
たとえば、我々のように統合ソリューションをクライアントに提供しようとするDXerの立場からすると、上図のアプリケーションレベルを使用して、その上にソリューションを構築することができればよいわけです。私が書いているこの新規事業シリーズは、そういった観点から書いてますので、他の事業を目指す人の記事とは異なることをご承知ください。
AIプラットフォームアプリケーションの例
ちょっとググると、マーケットでは、すでに多くのAIアプリケーションが廉価で提供され始めています。分野は様々で、その数もこれから急増してくるでしょうから、自社の目的に合ったアプリケーションを選別することが大切となります。
Sony
Microsoft
株式会社トライエッティング
ロボティクスプラットフォーム
先月特集したロボティックスの分野にもプラットフォームソリューションが既に存在しています。いくつかの例を列挙します。
Rapyuta Robotics株式会社
NEDOのRobotics Platform
プラットフォームのわかりやすい説明があります。是非、ちらっと見てください。
株式会社ヘッドウォータース
昨年9月にマザーズに上場した会社がAIをロボティックスに応用。このサイトのPepperへの応用がおもしろいですね。まだ、反応速度がいまいちですが、スピードが上がるとすごいことになりそうです。時間の問題でしょう。
プラットフォーム戦略
少し、補足的内容になりますが、我々がDXソリューションに利用しようとしているプラットフォームと、「プラットフォーム戦略」とは内容が異なります。ちょっと分類的にはビジネスモデルに近いので、ここに掲載するのは不適当かも知れませんが、この戦略もサブスクリプション戦略などとならぶ最近の主流なので簡単に説明しておきます。
プラットフォーム戦略を大規模に実践し成功している企業は既に多く、Google, Line, 楽天など身近にほとんどの人がなんらかの形で関わっているというのが実情です。
特徴は、楽天市場などでも知られているように、多くの企業(店舗)に、ネット販売の場所を提供し、顧客を多数の企業グループ経由で囲い込み、そのネットワークを利用してさらに別のマーケットそ創出し拡大していくというビジネスモデルです。
BtoBtoCとも呼ばれています。このモデルの特徴は、複数のパートナー企業とアライアンスを組むことによって、顧客ニーズにレバレッジを効かせることです。以前のレポートで、自社がもしDXソリューションを提供するビジネスに参入しようと思ったときに、昔では自分ですべてのリソースをかかえていなければできなかったことが、プラットフォーマーとその提携企業(アライアンス・パートナー)を利用することによって、短時間でかつ低い初期コストで開始することができるわけです。そこで、我々として必要な知見は、既に成功しているプラットフォーマーについてどれくらい知っており、どのくらい利用できる能力があるかということになります。
今月3月19日に上場したココナラも典型的なプラットフォームビジネスとなります。この場合は、モノではなくスキルを売買するマーケットプラットフォームになります。
プラットフォームビジネスのキーは「ネットワーク効果」
いうまでもなく、莫大な数のユーザーがネットワークに入ってしまえば、その場所とコネクションを使って、広告を始め様々なビジネスを追加展開していくことが出来るようになります。
我々としては、自分がプラットフォームを立ち上げるのは厳しいでしょうから、いかに既存のプラットフォームを安価で利用するかを考えるのが大切でしょう。
– 以上 –